服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第205回
美しい車の乗り方

女性と一緒に自動車に乗ることがありますか。
自分が運転する場合には、あまり問題がないでしょう。
ごくふつうに運転席の隣に座ってもらえれば良いのですから。

ところがタクシーの場合だとか、
運転手がいる場合には少し様子が違ってきます。
自動車にも席順があって、
運転手の後席が上席ということになっています。
それで私なども女性と一緒の場合、
つい「どうぞお先に」と言って、
先に乗ってもらうようにする。
右ハンドルの場合、それが上席になるわけですから。

でも、これが本当に美しい乗せ方であるかどうか。
男はたいていスーツのことが多いから、
車の座席の上でも移動しやすい。
けれども女性がいつもそうであるとは限らない。
たとえば長いドレスだとか、
逆に短いタイト・スカートである場合には、
一度シートに座り、そこから右へ移動するのは、
男ほどに簡単ではない。

ということは、むしろ服装によっては、男が先に乗って、
右側に移動したほうがより親切だということがあるのです。
昔、ある大先輩と2人でタクシーに乗った時、
「君が先に入ってくれ」と言われことがあります。
どうもその方も、右側へ移動するのが
好きではなかったらしいのです。
親切ということ、美しいしぐさということ、
なかなか難しいものです。

車に乗る時、頭から先に入ろうとするのは、
美しくない方法です。
大きな順序からいえば、腰、頭、脚の順に車の中へ入れる。
車の位置に対して、身体をやや斜めにするような感じで、
まず腰をシートに下ろす。
そして次に頭を室内に入れる。
そして最後に脚を揃えるようにして入れる。
もちろんそれは分解写真ではないのですから、
一連の動きとして行うわけです。
こうすると、いつ、どこから見ても、
ああ、美しい乗り方だなあ、ということになるでしょう。
降りる時はその逆。
まず先に脚を外に出し、頭を出し、
そこから立ち上がれば美しく車の外に出られるわけです。


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2003年4月16日(水)

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