服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第217回
美しい鮨の食べ方

鮨はお好きですか。
これはちょっと愚問かも知れません。
日本人で鮨が嫌いという人は少ないでしょう。
もちろん私も鮨は好きです。

鮨屋へ行く。
すると「ツマミでくれ」と注文する人がいます。
要するに握り鮨ではなく、
まずは刺身で食べたい、というわけです。
人の好みはさまざまで、
これも好みのひとつかも知れません。
でも、言うまでもありませんが、鮨と刺身は別物なのです。

刺身と鮨ネタはまったく違うのです。
鮨ネタはそれ専用に仕上げた飯と一緒に口に入れた時に、
最高に美味しい状態に創られる。
少しおおげさに言いますと、
鮨は食の、総合芸術品なのです。

もっとも世の中には必ずしも
芸術品でない鮨もありますから、
ここで簡単に結論出すのは難しい。
けれども、まるで芸術品のような鮨屋に行った場合に、
刺身ばかりを食べるのはあまり上品なことではありません。

芸術品のような鮨屋ではとりあえず鮨を食べる。
ひと通り、おすすめの鮨を食べた後、
個人的な好みをつけ加えるのは自由でしょう。
鮨の合間に酒を飲む。
でも、酒が主で、鮨が従というのも困ります。
まず美味しい鮨があって、
その脇に酒もあるという状態。

なぜこんな当り前のことを言うのか。
店はすべて客によって作られるところがあります。
客が皆、刺身を食べて、
ビールやウイスキーばかり飲むようになると、
鮨屋である必要はなくなってしまいます。

美味い、芸術品のような鮨屋を残したいと思ったなら、
まず鮨を食べるべきです。
また細かいことを言うなら、箸ではなく、手で食べる。
これはもともと鮨は江戸末期の
ファースト・フードであった背景があるからです。
と同時に、芸術品のような鮨を食べていると、
手でさわった瞬間、ある程度その良し悪しが
予感できるようになるのです。
つまりそのくらい鮨は繊細微妙な食べ物なのでしょう。

日本が世界に誇る伝統食である
鮨の美学を守り続けるためにも、
美しい食べ方をしようではありませんか。


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2003年4月28日(月)

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