服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第218回
美しく「失礼」と言いましょう

“パルドン”という言葉を知っていますか。
もちろん「ごめんなさい」という意味あいのフランス語ですね。
むかし、フランスに行った時、
よく町中でこの“パルドン”という言葉を
耳にすることに驚いた経験があります。
たとえば電車のなかで、
見知らぬ相手と肩がぶつかってしまう。
するとすかさず“パルドン”と言う。

“パルドン”という言葉の本当の意味、
その重さ軽さは時と場合によって、
人さまざまでしょう。
心の底から“パルドン”と言うこともあれば、
一応の習慣として“パルドン”と口にすることもあるでしょう。
でも、この“パルドン”のひと言が
一種の潤滑剤になっていることは間違いありません。

仮に私の肩が誰かにぶつけられた時、
“パルドン”とくれば
「どう致しまして」という気分になるし、
なんの言葉もなければ、
「ナンダこいつ」と思ってしまうかも知れません。

では、“パルドン”に当る日本語は何でしょうか。
地下鉄のなかで肩がふれて「ごめんなさい」というのは、
少しおおげさになるでしょう。
私自身は、「失礼」ということにしています。
棚に乗せていた本を取ろうとして、
うっかり座席の客に落としてしまった時にも、「失礼」、
足を踏んだ時にも、「失礼」。
私としては勝手に便利な言葉だと思っています。

もちろん相手の方が私の「失礼」に対して
どう思っているかは知りません。
でも、なんにも言わないよりは、ましでしょう。
と同時に、単なる言葉だけでなく、
全体の雰囲気も大切だと思います。
「失礼・・・」と言う時の自然な身のこなし・・・。
つまり、自分がちょっとしたミスをした時に、
「失礼」を美しく言えるかどうかが、
大人の男としての第一条件ではないでしょうか。

逆に、相手から「失礼!」と言われた時、どうするか。
これはちょっと難しいですね。
私としてはとりあえず、
「お構いなく」あたりが良いのでは、
と考えているところなのです。


←前回記事へ

2003年4月29日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ