服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第251回
これぞ本物 徑山寺みそ

金山寺みそを知っていますか。
この間、少し金山寺みそのことを話しました。
すると、ある方から親切にも
金山寺みそを送って頂いたのです。

それは、和歌山、御坊市の
「堀河屋」徑山寺(きんざんじ)みそ。
金山寺ではなく、徑山寺となっているのです。
もちろん早速食べてみました。
いや、食べる以前にフタを開けただけで、
いかにも味覚をくすぐる上質の匂いが漂う。
一口食べて、美味い。
二口食べて、すこぶる美味い。
私の頭のなかにあった金山寺みそとは
まったく別物なのです。

しょうゆは日本で生まれた。
けれどもしょうゆのもとになった金山寺みそは、
もともと中国にあったものだそうです。
もちろん徑山寺みそに添えられたパンフレットに
教えられたにわか勉強なのですが。

むかし覚心(かくしん)というお坊さんがいた。
このお坊さん、仏教の修行に今の中国に行く。
建長元年(1249年)というからかなり昔の話ですね。
さて、手短に話を進めると、
覚心は徑山寺で修行する。
この修行のときに、独特のみそがあることを知る。
そして約10年中国で修行して、帰国する。
この時に持ち帰ったのが、徑山寺みそ。
そして伝説によると、覚心は堀河屋の祖先に
その作り方を教えたというのです。

そのようなわけで、
今なお堀河屋では昔ながらの製法で
徑山寺みそをつくっているのだそうです。
大豆をいる。その大豆を麦と混ぜて、蒸す。さらに麹を加える。
あとは真桑ウリ、茄子、シソ、ショウガなどを加えて漬け込む。
平均して3ヶ月の漬け込みで完成するのだそうです。
でも、通人になると浅い漬け具合がいいとか、
逆に深い漬け具合がいいとか、
注文をつけることもあるとか。

そしてこの徑山寺みそをもとに
一般化したものが、金山寺みそ。
つまりこのふたつはよく似ているものの、
細かいことを言えば別物なのです。
まあ、美味いならそれでいいのですが、
世の中には本当に知らないことが多いですね。


←前回記事へ

2003年6月1日(日)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ