服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第279回
ちょっと涼しい話

竹夫人というのを知っていますか。
ごく簡単に説明すれば、竹で編んだ人形のことです。
多少の大小はありますが、およそ1.2mくらい。
むかし、暑い夜、これを抱いて寝たのです。
もちろん私も名前を聞いたことがあるだけで
実際には見たことも使ったこともありません。
たとえば平安時代などには、
竹夫人を使ったのでしょう。

今でも竹枕がありますね。
その大型と言えば、
当らずとも遠からずでしょう。
でも正しくは「籠枕」(かごまくら)と呼ぶのだそうですが、
陶枕(とうちん)などもそうですが
暑くて寝苦しい時に使うと、
少し冷んやりとして気持良くなるわけです。

ところがこの間、百貨店を歩いていて偶然にも
「ボディーピロー」という新製品を発見しました。
これはなんと竹夫人とそっくりだったのです。
いや、竹夫人そのものなのです。
温故知新というべきでしょうか。
竹夫人がすたれてから何十年、
何百年経つか知りませんが、
まったく同じ発想のものが、
まったく同じ形で復活したわけです。

暑い夜についクーラーをつけてしまう。
確かに安眠はできるのでしょうが
翌朝、頭が重かったりする。
少なくとも自然で、健康的とは言えないでしょう。
こんな時にボディービロー(竹夫人)があったら、
自然で、しかも心地良く寝られるのかも知れません。

ところで竹夫人は実在の人物であった、
と言えば驚かれるでしょうか。
でも、これは事実なのです。
中国、漢の時代、武帝の寵愛を受けた女性でした。
もともと竹(ちく)という姓であったので、
後宮となって以降、竹夫人の名で呼ばれたのです。

一方、中国には古くから竹で編んだ人形があって、
これおを「夾膝」と言った。
膝ではさむもの、ということでしょう。
でも、これでは味気ないと、
実在した人物に因んで、
詩人の蘇東坡(1036〜1101年)が
竹夫人と名づけたのだそうです。
それはともかく、エネルギーは使わずに、
上手な涼み方を考えたいものですね。


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2003年6月29日(日)

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