服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第290回
足もとの色を楽しむ

デッキ・シューズを履いたことがありますか。
私はふだん履きにいつも
デッキ・シューズを使っています。
軽くて、歩きやすく、素足でも
楽に履けるところが気に入っているのです。

デッキ・シューズが本来は
ヨット専用であることは言うまでもないでしょう。
濡れたヨットの甲板でも
滑ることがないように考えられているわけです。
デッキ・シューズは、今も昔も、
「トップサイダー」が有名ですね。
正しくは“スペリー・トップサイダー”と呼ばれます。

アメリカのヨット愛好家、
ポール・スペリーが考案したところから、
この名前があります。
愛犬が濡れたヨットの上でも滑らないことに気づいて、
細かい波型の筋を刻んだ独特のゴム底を開発したのです。
むろん“スペリー・ソール”がそれで、
1935年のことだと伝えられています。

ヨットに縁のない私がなぜデッキ・シューズを履くのか。
その第1の理由は、さまざまな色が揃っているからです。
黒や茶は当然として、白や紺、赤、
時にグリーンやピンクというのまでがあります。
男物の靴で、色がこんなに揃っているのは
珍しいのではないでしょうか。
夏のカジュアル・ウェアを楽しむ時、
なんとも心強い小道具だと思います。
ことに軽快なショート・パンツなどには
最高の相棒ではないでしょうか。

さて、私のデッキ・シューズの楽しみ方のひとつに、
靴下の色と合わせることがあります。
たとえば白のデッキ・シューズに、白のソックス、
紺のデッキ・シューズに紺のソックス、
赤のデッキ・シューズに赤のソックス・・・。
コットン・ソックスも各色揃っていますからね。
今日はどんな色にしようかと、
わくわくしてしまうほどです。

デッキ・シューズの色と、
コットン・ソックスの色合わせ。
ちょっと子供っぽいでしょうか。
でも、こんなささやかなことで
心をうきうきすることも
実はとても大切だと思うのです。


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2003年7月10日(木)

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