服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第291回
子育てはアートです

今回は、日ごろご愛読下さっている
読者のKさんから
以下の感想メールをいただきましたので、
そちらのご回答を掲載させていただきます。


■K様にいただいたメール

はじめまして
毎日楽しみに読ませて頂いています。
最近書かれているおしゃれな
ライフスタイルの数々とてもすてきですね。

私も夢想するのが特技なので、
出石先生の提案をうっとりと、
想像しながら読むのがとても楽しいです。
どれも自分の生活に取り入れたいことばかりです。

が、子供が小さいため自分のペースで生活するのが難しく、
夢想するだけなのが少々残念なところです。
それでもなにかひとつでも実行できたら、
ご報告させて頂きたいと思います。


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にもお便りを下さり、
ありがとうございます。
また、日頃はご愛読下さり、
重ねて御礼申上げます。

目下、子育ての最中とのこと、
さぞかし大変なことだろうとお察し致します。
私自身のことをお話し申しますと、
珍しいほどの過保護で育ちました。
文字通りの溺愛。
当の本人が過保護であったと認めるくらいですから、
よほど程度の過ぎたものであったと、
考えて頂いて結構です。
良くも悪くもその結果が、私であります。
どうやら私自身は子育てについて
なにかを語る資格はなさそうです。

でも、あえてひと言だけ言わせて頂きます。
子育ては、人間の、それも主として女性による、
最高の芸術だと思うからです。
子供こそ活きた芸術品である、と。

子にとって母は唯一、かけがえのない存在です。
お腹(なか)の赤ちゃんが、
まず最初に授かる感覚は聴覚だと言われています。
まだ眼も見えず、匂いも分らない頃から、
音だけはしっかり聴えているのです。
そこで最初に聴くのは、母の心音です。
ゆったりとしたときの、規則正しい心臓音。
なにかに驚いたときの、早い動悸の音など・・・。

子はどんなに幼くても、耳は聴えているのです。
ことに母の言葉は神の言葉にも似ているでしょう。
子供はまだ言葉の意味が分らないから、
というのは間違いです。
優しい音なのか、激しい音なのか、
悲しい音なのか、子はすべて分っています。

楽しいこと、うれしいこと、
なんでも子供に話してあげて下さい。
なによりのパートナーなのですから。
童謡を唄ってあげるとか、
童話を読んであげるとかもとても良いことです。
親は親、子は子と分けるのはもっと先で良いでしょう。
つまり夢だって一緒に語り、見れば良いのです。
子供とふたりで夢想する。
なんて素晴らしいことでしょうか。

Kさんのお子さんは
きっと見事な芸術品になるだろうと思います。


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2003年7月11日(金)

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