服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第302回
これが私のポロシャツです

ポロシャツはお好きですか。
もちろん私も好きで、良く着ています。
ポロシャツはその名前の通り、
馬に乗って球を打つポロ競技から
生まれたことになっています。
たしかに現在のポロシャツの原型が
ポロ競技にあったことは間違いありません。
でも今のように広く一般化したきっかけは、
テニスからであったのです。

1904年生まれの、フランス人プレーヤー、
ラコステ選手のテニス・ウェアからの影響なのです。
ジャン・ルネ・ラコステは
1920年代に大活躍したテニス選手。
どんな球を打っても、必ず食いついてくるところから、
“クロコダイル”の仇名をつけられたものです。

1920年代のテニス選手はみな、
白いワイシャツに白ズボンでプレイした。
けれどもラコステは工夫して、
コットン・ジャージーのスポーツ・ウェアを着た。
それは吸湿性が高く、動きやすく、
短い時間に手早く着換えができたからなのです。

ルネ・ラコステはその後、引退して、
ポロシャツを販売する会社をつくる。
胸元に自分の仇名となった
ワニのマークをつける。
この新しいビジネスは大当りとなり、
ラコステは巨万の富を得ました。
ただしヨーロッパの人たちは
必ず“ラコスト”と呼びます。

さて、ポロシャツの特徴は
スポーティーであるけれど、
けっして崩れた印象にはならない点でしょう。
そこで私としては自分の好きな、
大胆な色を着ることをおすすめします。
私の場合には鮮やかな紫色がそれです。
ピンクでも、赤でも、イエローでも良いでしょう。
そして自分の好きな色のポロシャツを何枚か買う。
つまり実際に着て、比較してみるわけです。
と、一見まったく同じように見えても、
実際にはかなり着心地が違うことに気づくはずです。
そのなかに必ず納得のゆく1枚が見つかるでしょう。

これが“マイ・ポロシャツ”。
同じメーカーの同じ色のポロ・シャツを何枚も持っている。
そして汗をかくたび、1日に何度も着換える。
なんとおしゃれなことでしょう。


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2003年7月22日(火)

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