服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第307回
素足の快感

素足のままで靴を履くことがありますか。
これは実際にやってみると、本当に気持の良いものです。
そしてまた靴のなかには、
絶対に靴下を履いてはいけないものもあります。

ひとつの例をあげれば、
オイルド・レザーのデッキ・シューズがそれです。
防水性を高めるために、
オイルを充分にしみ込ませた
レザーで作ったデッキ・シューズ。
もしもこれに靴下を履いたなら、
たちまちオイルで汚れてしまいます。
いや、汚れるかどうかという以前に、
そもそも靴下を履くことは考えていない靴なのです。

絶対に靴下を履かない靴はまだ他にもあります。
たとえばエスパドリーユespadrille。
これはフランスの海辺靴で、
布製のサンダル状の靴。
底はロープで作られています。
これに似たスペインの靴が
アルパルガータalpargata。
やはり布製で、足首に共紐を巻いて履きます。
名前こそ違え、あまりに共通点が多いので、
そもそもの起源は同じところにあるのだろうと思われます。

このような典型的な海辺靴ばかりでなく、
ごくふつうのスニーカーでも
素足で履きたくなることがあります。
最近、本来はドライビング・シューズなのですが、
それを街歩きにするのが流行っています。
これもやはり素足で履きたい。
靴下で履くと、どこか野暮ったい感じになります。

さあ、素足の快感を大いに楽しみましょう。
でも、ひとつだけ困ったことがあります。
日本の夏は湿気が高い。
長く履いていると、どうしても湿気がこもってしまう。
私なども靴を脱いだ後で、
むしろ不快になるほどです。

そこで素足の気持良さのためには、
インソール(中敷き)を上手に使いましょう。
靴屋などでさまざまな種類があり、値段も高くない。
これを何組か用意しておき、交互に使うようにします。
湿気を中敷きが吸収してくれるので、これを交換して履く。
中敷きは乾かせば何度も使えます。
またひどく汚れたなら、洗うことも出来ます。
たったこれだけのことで、
素足の快感がいつまでも楽しめるのです。


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2003年7月27日(日)

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