服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第312回
和紙とコンピューターとの結婚

和紙を使う機会がありますか。
筆不精の私がごくたまに手紙を書く時、
和紙の便箋を使います。
同じように葉書も和紙のものです。
葉書はずっと使っていたのが生産中止となり、
今では私が使う分だけ特別に作ってもらっています。
予期せぬオリジナルで、
長く使っているとこんなこともあるのです。

和紙の葉書といえば、こんな経験があります。
むかし、烏山にあった江國滋さんのお家に伺った時のこと。
そうです、あの随筆の名手であった、江國滋。
惜しい人を亡くしたものです。
さて、部屋に額に入れた内田百間の葉書が掲げてある。
表書きに江國滋様とあって、
裏にはなにかの礼がしためている。
つまり葉書の表と裏、両面を左右に配しているのです。

無知な私は不思議に思って、聞いてみた。
すると江國さん親切に教えてくれた。
和紙というのはどんなものでも緻密な繊維層で、
鋭利な刃を使うと、いとも簡単に1枚の紙が
2枚に分けられるのだそうです。

今でも私が和紙の葉書や便箋を使うのは、
その時の強い印象があるからかも知れません。
ただし誰かが私のいたずら書きを、
裏表2枚に分けるだろう、
などと思っているわけではありませんが。

現在、手書き派は少数で、
たいていはコンピューターで
簡単にプリントアウトができる。
文章や手紙を読む時でも
ほとんどがプリントアウトされたものです。
仕事上のやりとりはこれでまったく問題ないでしょう。
でも、個人的な手紙の場合には
少し工夫してはどうでしょうか。

それが実に良い和紙があるのです。
雁皮(がんぴ)を原料にした和紙で、
プリント文字が美しくあらわれるように考えられている。
雁皮は楮(こうぞ)に較べてより細く、より短い繊維で、
かなり緻密な表面感が生まれるのだそうです。
富山県、八尾町の吉田泰樹さんが
苦労の末に完成させたプリントアウトにも使える和紙。
「桂樹舎」(TEL:0764-55-1184)に連絡すれば、
直販もしてもらえますよ。


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2003年8月1日(金)

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