服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第314回
たまには古着屋をのぞいてみましょう

古着屋をのぞくことがありますか。
私はときどき足を運びます。
たとえばジーンズは
サイズ別、ブランド別に並んでいて、
だいたい新品の3分の1くらいの値段で買えます。
それも実によい感じに仕上った中古品を。

ビジネスとしての古着はちょっと変っています。
たいていはアメリカで仕入れるのです。
巨大な倉庫に巨大な箱が並んでいて、
1箱何万円と仕入れる。
つまり箱の中を開けないで買う。
まったく未整理のまま古着が詰められていて、
開けてびっくり玉手箱というわけです。
原価は驚くほど安い。
結局のところ洗濯代や修理代、
整理代を圧縮することができれば、
これほどうまい商売もありません。

でも、これから古着ビジネスを
はじめようという人はいないでしょうから、
買うほうの話をしましょう。
今、古着の主な客層は中学生、高校生だと思います。
2千円、3千円で個性的なおしゃれが楽しめるわけですから、
ある意味でたいへん健全なことです。
そしてまた大人が買っていけないということもありません。

大人が古着を取入れる場合、
上から下まで古着というのはおすすめできません。
なにか1点だけを古着にする。
たとえば古着のシャツを選ぼうとします。
この時、自分の持っている服の、
どのパンツに、どう組合わせるかを、
はっきりと思い描いて買うこと。
これが賢い方法です。
あるいはおしゃれ上手の友人と
一緒に行くのもひとつの方法でしょう。

たとえばアロハ・シャツなども上手に探せば、
専門店よりもはるかに個性的な、
貴重品が見つけられます。
ただし貴重品はそれなりの値段が付いていますが。
え、これが何万円!
と驚くのもよい刺激を与えてくれるはずです。

買うか買わないかはさておき、
古着屋はおしゃれ上手のための塾です。
その服が自分のサイズであるかどうか。
そのシャツがコットン100%であるかどうか。
そのコートがどこのブランド品であるかどうか。
少なくともおしゃれの目が
鍛えられることは間違いありません。


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2003年8月3日(日)

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