服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第344回
帽子のイメージ・トレーニング

秋になったら一番最初にしたいことは何ですか。
もう暦の上で秋ですが、
世間はまだ夏の名残り。
はやく本格的な秋が来ないかなあ。秋が待遠しい。
秋になったらまず最初にしたいのは、
帽子を被ること。

夏の間はずっとパナマ帽やストロー・ハットばかりで、
ソフト帽が恋しい。
はやくソフト帽が被りたい。
ソフト帽といえばなにか固い感じがありますが、
もっと気楽な印象で被りたいのです。
もう何年も何年も被りつづけて、
少しくたびれてきたかなあ、
という帽子を被りたいのです。

ソフト帽はいつまでもなくフェルト製で、
フェルトは穴が開かない限り、
いつまでも使えます。
リボンを取り替えたり、
洗濯(ドライで)したりも可能なのです。
その意味ではほとんど永遠の生命があり、
年齢を重ねたソフト帽は宝物でもあります。
大切に扱ってやろうではありませんか。

こんなふうに実際には被っていないのに、
ソフト帽のことをあれこれと考えてみる。
少し飾って言えば、イメージ・トレーニングですね。
おしゃれ上手とそうでない人の差は、
このイメージ・トレーニングの有無にあるのではないでしょうか。
頭の中で考えてみることは、意識することで、
自分の気持をより良く刺激することで、
このことが実際に着た場合に、
プラスに働くのだと思います。

イメージ・トレーニングは帽子に限らず、
シャツでもネクタイでも、
あるいはまた全体の組合わせについても
同じことが言えるでしょう。
たとえばソフト帽に小さなバッジを飾ってみる。
リボンの結目の近くに。
こんなささいなことだって、
あらかじめイメージ・トレーニングをするのとしないとでは、
少し違ってくるはずです。

帽子の被り方、脱いだ時の持ち方などについても、
イメージ・トレーニング。
それほどイメージ・トレーニングは大切です。
でも、ソフト帽で、唯一、やってはいけないこと。
それはヤマの突端、頂点をつまむこと。
これ以外は何をやっても大丈夫です。


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2003年9月11日(木)

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