服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第355回
スーツで遊んでみよう

スーツをあえて着崩してみたことがありますか。
ドレス・アップならぬドレス・ダウンというわけです。
男の大人でスーツを
1着も持っていない人はいないでしょうから、
これはぜひ一度試してみるべきです。

なるべく洋ダンスの奥のほうから1着探してくる。
最近とんと袖を通してないような。
紺のチョーク・ストライプで、
ダブル前なんていうのが良いでしょう。
もっとも最近ではふたたび
リバイバルのきざしもあるようですが。

とにかくクラシックなスーツを使って遊んでみる。
まず最初に、白のTシャツを着、
その上にスーツを羽織ってみる。
そして近所のカフェ・テラスに坐って、
グラス・ワインの一杯傾ける。
ちょっとした冒険ですが、
これはぜひ必要な冒険ですから、
ぜひ試みて下さい。

ちょっと緊張するかも知れない。
でも、絶対に入店を断わられることはない。
「あなたの着こなしはヘンです」と指摘されることもない。
もちろんタイホされることもありません。
服は、それを着ている以上、
絶対にタイホされることはない。
この確信を持つことが
着こなしにおいては大切なのです。
少なくとも、
「あ?Tシャツにスーツでも大丈夫なんだ」と思うでしょう。
これこそすべてのはじまりなのです。

Tシャツにスーツ。
するとどうせスーツに合わせるのなら、
もう少し上質のTシャツでもいいかな、と思う。
たとえば細番手のコットンで、
まるでシルクのような光沢を持つTシャツがあることに
気づくでしょう。
たったそれだけのことで、
全体の印象が大きく変ってくるはずです。
さらにはTシャツで自信がついたなら、
ポロシャツや薄手のスェーターなどは、
当然という感じになります。
最初にちょっとした冒険をすることによって、
後あと気持が楽になり、
ますます楽しくなってくるでしょう。
1着のスーツを、ドレス・アップにも、
ドレス・ダウンにも使えないようでは、
本当の大人とは言えませんよ。


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2003年9月22日(月)

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