服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第376回
おしゃれにおしゃれにココアを飲みたい

ショコラを飲んだことがありますか。
つまりチョコレートですね。
フランス語だと“ショコラ”になる。
菓子屋で「ショコラ」と言えば
チョコレートになるし
喫茶店で「ショコラ」と言えば
ココアになるわけです。
正しくは“ショコラ・ショオ”と言うのかも知れません。

もっとも日本のココアとショコラとは
まったく同じものではありません。
本当にチョコレートを液体にしたようで、
濃いし、美味いし、熱い。

ココアの原料はココア・トゥリーから作られる。
ウソみたいな話ですが、本当です。
この木の種子を粉にしたものが
ココア・パウダーなのです。
ヨーロッパで、このココア・パウダーをもとに
飲みものを考えたのは、
オランダ人のコンラッド・J・ヴァン・ホーテンという人で、
1828年のことだそうです。
今でもヴァン・ホーテンのココアは有名ですよね。
つまりヨーロッパパブでは
固形食料のチョコレートよりも、
飲料としてのココアのほうが古いということになります。
食べるココア(チョコレート)として成功したのは
1853年、ジョン・キャドバリィによって。
最初は“イーティング・チョコレート”
と呼ばれたと言います。
ついでながらミルク・チョコレートは
スイスで生まれました。
1867年、アンリ・ネスレがその調合を考案したのです。

私、男のくせに甘いものが大好きで、
ココアもよく飲みます。
ミルクをわかして、ココア・パウダーの上から
少しづつ加えて練る。
この練る作業をおろそかにすると、
美味しいココアはできません。
ゆっくりゆっくり練ってゆく。

喫茶店で人と待ち合わせする時にも、
よくココアを飲みます。
とくにコーヒーばっかり飲みつづけているような時には、
とくにココアでほっとします。
ただ残念なことは、ココアを出す店が少ない。
ことに美味しいココアを出してくれるところが少ない。
チョーク・ストライプのスーツを着て、
ステッキを片手に持って、
ゆっくりココアを飲む一瞬は、
とてもおしゃれなことだと思うのです。


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2003年10月13日(月)

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