服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第392回
王様の茶漬け

夜食を食べることがありますか。
私も時折、食べることがあります。
いけないいけないと思いつつも食べる。
いけないというのは日頃からどうも食べているせいで、
一応は反省もしているのですが。

夜食にはなにを食べるか。
私は茶漬けですね。
冷飯があればあったでいいし、
なければないで少し炊くも良し。
夜食の王者は茶漬け、と勝手に決めています。
少しの飯でも茶漬けにすることで量がふえて。
実際にはそれほど食べるわけではない。
まあこれも都合の良い言いわけかも知れませんが。

さて、なんの茶漬けにしよう。
のり茶漬け、しゃけ茶漬け、鯛茶漬け・・・。
でも私の場合、茶漬けといえばこぶ茶漬け。
白い飯の上にうまい塩こんぶをば
はらりはらりとまき散らし、
その上から少々渋い茶をそそぐ。
あとはもう箸で食うばかりなりけり。
うむ、うまい。
茶漬けの王者はこぶ茶漬けと、
これまた勝手に決めつけている次第です。
つまり夜食にこぶ茶漬けを食うのは、
王者の楽しみになるのでは。
いや、ならないか。

私なにも食通ではないので、
ただの塩こぶがあればそれで良い。―
と思っていたのですが、
この間到来物の塩こぶを食べてみて、
腰を抜かしてしまいました。
あまりに上品、あまりにしっとりとしていたのです。

神宗の特製塩昆布。
塩昆布と言いながら、さほど塩辛くない。
いや、そんな味加減よりも先に、山椒の香りが絶妙。
ことに茶をそそぐと、
山椒の霧に包まれてしまったような気分がする。
神宗(かんそう)(TEL:06-6261-2308)は大阪の店で、
天明元年(1781年)の創業だというから、古い。
ほかにも鰹田麩やちりめん山椒も有名らしいのだが、
私はまだ食べていません。
塩昆布がこれくらい美味しいのだから
たぶん期待してもいいでしょう。

あんまり気に入ったので、酒の相手にしたところ、
これがまたいけるんですね。
酒を飲んで、少し塩昆布を口に運ぶ。
ああ、うまい。
これで最後に茶漬けがあれば、もう何もいらない。
そんな気分にさせてくれます。


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2003年10月29日(水)

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