服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第407回
小股の切れ上がったいい男とは

「小股が切れ上がったいい女」
という形容を知っていますか。
どうも姿の美しい女性、
といった意味があるらしいのです。
井原西鶴の本にも出てくるそうですから、古い。
私も口に出しては使いませんが、
耳にしたことはあります。
でも、この語源説は数多くある。
要するに分っていないのです。
もしご存じの方はぜひ教えて下さい。

さて、女性に小股(こまた)があるなら、
男性にもあって良いのではないか。
まさか「小股の切れ上がったいい男」
とは言わないのでしょうが。
でも、現実には同じようなパンツを穿いていても、
なぜか格好良い人とそうでない人がいます。
もう少し具体的に言えば、
まさに小股のあたりがすっきりとしている人と、
そうでない人との違い。
私たちはふつう、
上着のデザインや着こなしについてはかなり気を配る。
けれどもこれと較べてパンツは、
それほど注意されていないように思うのです。

もっと上手に、もっと美しく
パンツを穿く方法はないものでしょうか。
丁寧に仕立てられたパンツはよく見ると
左右対称ではありません。
ごくわずか、左側にゆとりを持たせてあるのです。
このゆとりのことを専門用語では
“ドレス・カット”と呼ばれます。
この左側の余裕をたくみに利用して
男性自身を収納する。
これが小股の切れ上がったいい男になるための
近道なのです。

むかしヨーロッパの古着屋で、
1本の古いパンツを買ったことがあります。
なぜかそれは私の体型にぴったりだったのです。
すっかり気に入って、良く穿きました。
穿き心地も良く、
なんとなく脚が長くなったような気分さえありました。
ある時、その古パンツにアイロンを掛けようとして、
あっと叫びました。
左右の内マタ部分に小さな鋭角三角形のマチ入っていたのです。
このマチのためにいっそうの柔軟性が生まれて、
小股の部分がすっきりと収まるよう
工夫されていたのでしょう。

これはちょっと特別な例であるかも知れませんが、
全体の着こなしのなかで
パンツの存在を軽く考えることは出来ません。
いや、むしろパンツを上手に穿くことから、
おしゃれははじまるように思うのです。


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