服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第406回
背広の命はゴージにあります

背広を見る時、どこに注目しますか。
私の場合は肩とゴージです。
上着であろうとスーツであろうと、
肩線が全シルエットの出発点であることは
言うまでもありません。
また肩のラインはそのスーツの性格を
端的に表現する場所でもあります。
いずれにしても肩線の重要性を
忘れることは出来ません。

この肩の一方で、
意外に見逃されているのが、
“ゴージ・ライン”gorge lineです。
“ゴージ”は「のど」の意味。
直訳すれば「のどの線」ということになります。

カラー(上襟)とラペル(下襟)の間に
当然ながら1本の縫目がありますね。
これがゴージ・ラインなのです。
では、なぜゴージ・ラインという名前があるのか。
一言で申しますと、背広の原型は立襟の上着であった、
という点に出発しているのです。
立襟の第1ボタンを外して、立襟を外に折返した。
この時に現在の背広が生まれたのだ、と。
そしてこの時にカラー(上襟)とラペル(下襟)とが誕生した。
と同時にゴージ・ラインも生まれた。
ゴージ・ラインはもともと立襟の基本線であったわけで、
折返した時、のどの中心を担うことになります。

つまりゴージ・ラインの延長線は必ず、
首の中心を指していなければなりません。
もしそうでなければ、
原型(立襟)から生まれたものではない、
ということになります。
ぜひ、ゴージ・ラインの延長線を
確認することをおすすめします。

ゴージ・ラインは一般に
「低い」とか「高い」とかの言葉で表現します。
低い場合には急角度のゴージとなり、
高い場合にはゆるやかな角度のゴージとなります。
その延長線が首の中心をめざしているわけですから、
当然、そのような形状になるでしょう。

また角度だけでなく、
よく見ると上品なゴージと下品なゴージとがあります。
好きなゴージと嫌いなゴージと言い換えても良いでしょう。
とにかくこのゴージがスーツや上着全体を
大きく左右することがあるのです。


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