服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第418回
もっと腕時計に愛情を

腕時計をいくつ持っていますか。
3本、5本、8本・・・。
もちろん少ないよりは
多いほうが良いのかも知れません。
でも私は量よりも質が大切だと思います。
自分にとっての理想的なたったひとつの時計。

比較的薄型で、丸型の、
手首にフィットする、ゴールドの時計。
私にとっての理想の腕時計はそんなところでしょうか。
なぜならワイシャツの袖口にとって、
もっとも優しい腕時計であるから。
たぶん腕時計愛好家からは叱られてしまう発言でしょう。

今はたいていの人にとって
ワイシャツの1枚や2枚よりも、
腕時計のほうがはるかに大切な時代になっていますから。
これはおそらくカジュアル化時代と
密接な関係があるのでしょう。
むかしの着こなしは
高い服装とそうでない服装があって、
地位や身分の表現がたいへんしやすかった。
でも今は誰もがTシャツとジーンズでいられる時代です。
結局のところそうなると、
腕時計か、靴か、鞄か、
ということになってしまうのです。

まあ、それはともかくとして、
腕時計もまた愛情が注げる1本を持っているべきでしょう。
たとえばクラシックな、手巻き時計であったなら、
毎日1回ネジを巻いてやることが
最低の条件だと思います。
「ああ、そういえばこんな時計もあったなあ」
と久々に思い出すようでは、
腕時計のほうがかわいそうです。
事実、時計が毎日、規則正しく動いていることは、
時計にとって大切なことなのです。
そして3年に1度は
専門家に手入れをしてもらうべきでしょう。
このように考えると、
あまりにも数が多いと、時計のために人生がある、
ということにもなりかねませんよ。

でも、少し発想を変えることで、
シャツの袖口にダメージを与えない方法もあります。
シャツの、袖口の上から腕時計をするのです。
時間も見やすいし、
自己表現にもつながりますし、グッド・アイディア。
もちろんこれはスェーターにも応用できます。
黒いスェーターの袖口の上に
ゴールドの腕時計が輝いているのは、
悪くありませんよ。


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