服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第421回
貴族の気分にさせてくれる結び方

ネクタイの結び方に、
ダブル・ノットというのがあるのを知っていますか。
これはプレーン・ノットの一変型なのです。
プレーン・ノットの別名は“フォア・イン・ハンド”で、
もっとも基本的な結び方。
短いほうに長いほうの一端を巻きつけて、
その輪の中に通して結ぶやり方です。

さて、この輪をつくる時に、
もう一度巻きつける。
つまり1重の輪に対して、
2重の輪を作っておいてから、
ネクタイの端を通してくゆく。
当然、結び目はより大きくなり、
細長い量感が生まれます。
また布地をより多く使う結果にもなり、
長すぎるネクタイを調節するためにも役立ちます。
この結び方のコツは、ゆるやかに扱うことです。
やわらかく巻きつけていき、
結び目を整えながら少しづつ締めるようにします。
ぜひ一度、気分転換にやってみて下さい。
ただし、ひとつだけ欠点があります。
解く時に小剣を抜くと、大剣に結び目が残る。
いや、欠点とことさに言うほどのことではありませんが。

実はこの結び方の正しい呼び方は
“プリンス・アルバート・ノット”。
プリンス・アルバートは
後のエドワード7世(1901〜1910年在位)のことです。
ヴィクトリア女王の長男であり、
ウィンダー公の祖父でもあります。
エドワード7世は
皇太子の時代が長かった人であり、
また、おしゃれでもあった人。
おしゃれも隔世遺伝するのでしょうか。
ファッション用語ひとつとっても、
“アルバート”がつく言葉がたくさんあります。
ひとつだけ例をあげると“アルバート・ウォッチ・チェーン”。
長く、太い、クラシックな懐中時計用の鎖のことで、
もちろんおしゃれな皇太子が使いはじめたので、
その名前があります。

その日、その時の気分でネクタイの結び方を変えてみる。
誰にでも、すぐに出来ることです。
しかも想像以上に、気持を変えるきっかけになってくれる。
もし人に訊かれたなら胸を張って
「プリンス・アルバート結び」と言って下さい。


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