服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第423回
ベスト・ドレッサーへの近道

今回は、日ごろご愛読下さっている
読者の飯塚 様から
ご質問メールをいただきましたので、
ご回答を掲載させていただきます。


■飯塚 様にいただいたメール

いつも楽しく拝見させていただいております。
今回はベストのことでお聞きしたいことがありまして、
メールをお送りいたしました。

ベストというと3ピースですが、たまたま
友人から単品のベストを譲ってもらいました。
背中側の布が変わっていて気に入っているのですが、
同じような色のスーツを持っていません。

スーツとベストの色が違う。

これはダンディズムに反しますでしょうか?

お返事お待ちしております。

飯塚


■出石さんからのA(答え)

いつもご愛読下さり、
ありがとうございます。
また、ご丁寧にお便りを頂きましたことにつきましても、
重ねてお礼を申上げます。

ベストを譲ってくれるお友達がいらっしゃるとのこと、
うらやましい限りです。
ぜひ、大いに活用して下さい。
たしかにベストといえば
すぐにスリーピース・スーツを
思い浮べる傾向はあります。
でも、必ずしもジャケットやパンツと
お揃いである必要はありません。

現在のようにスリーピース・スーツが一般化したのは
20世紀に入ってからのことで、
たかだか100年くらいの歴史なのです。
これに対して、上着や、ベストや、パンツなどを
それぞれ独立した色柄で組合わせる歴史は、
少なくとも数百年はあるでしょう。

むかしは“ウェストコーティング”
waistcoatingという言葉がありました。
これは「チョッキ地」の意味です。
同じように“コーティング”(上着地)、
“トラウザリング”(ズボン地)
という言葉を使ったものです。
ひとつだけ例をあげれば、モーニング・コート。
黒い上着、グレイのチョッキ、縞ズボンという組合わせですね。
もともと男の服は上着、チョッキ、パンツを
それぞれ決められた生地で仕立てる習慣があったのです。

歴史はともかく、
スーツのなかに異なったチョッキを合わせることは
まったく問題ありません。
とくに“オッド・ベスト”とか
“ファンシー・ベスト”の呼び方があるほどなのですから。
さらにはスポーツ・ジャケットに替ズボン、
そしてオッド・ベストという着こなし方もあるでしょう。

ただし全体の色の調整には多少、
気を配るべきでしょう。
ブルーのスーツにグレイのベストといった場合には、
かなりおしゃれな感じになります。
一方、ベストがスーツなどに対して、
大胆な色調であったなら、
シャツやネクタイを
なるべく同系色でまとめることをおすすめします。
もちろん場合によって、
タートル・ネック・スェーターの上に重ねて、
まるで袖のない上着であるかのように
着こなす方法もありますよ。


←前回記事へ 2003年11月29日(土) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ