服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第424回
カウボーイの心意気を結ぶ

ボーロ・タイというのがあるのを知っていますか。
紐状のネクタイ。
日本語では「ループタイ」の名前があります。
ああ、あの悪趣味な細飾りか、
とおっしゃる方がいるかも知れません。
でも、少しだけ話を聞いて下さい。

“ボーロ・タイ”bolo tieは時として
“ボーラ・タイ”bola tie
または単に“ボーラ”と呼ぶこともあります。
そしてこの風変りなネクタイは比較的新しいもので、
1940年頃にはじまったものです。

アメリカ、アリゾナ州のカウボーイ、
ヴィック・セザースタッフという人物が考えたのだそうです。
ある時、ヴィックは野性馬を乗りこなそうとしていて、
被っていたカウボーイ・ハットを落としてしまった。
彼はこの失敗にこりて、
しっかりとした革紐を帽子に通して、
首の下で結んでおくようにした。
これがやがて首元の装飾となって、
ボーロ・タイが生まれたのです。

“ボーラ”とは主として南米で使われる投げ縄のこと。
ただし動物の脚にからませやすいように
丸い玉が付いている。
もともとはスペイン語で「玉」のことを
“ボーラ”と言います。
これに似ているというので、ボーロ・タイ。
アリゾナ州では1971年に、
これを州における正式ネクタイとして採用しています。

要するにボーロ・タイは
ウェスタン・ルックの一種なんですね。
妙に日本的なデザインにしないで、
ウェスタン調のそれを、
はっきりとした主張を持って結べば、
また違った印象になるのではないでしょうか。
いや結ぶというよりはメタル・クラスプに通す、
と言うべきでしょう。
ついでながら先端の飾りはメタル・チップです。

デニムのシャツの襟元には
ふさわしいアクセサリーだと思います。
少なくとも頭からダメと決めつけたものでもありません。
ただ、なんとなく結ぶのではない。
明確な信念を持って、結ぶ。
これは何もボーロ・タイに限らず、
男のおしゃれ全般に共通した真理だと思います。


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