服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第426回
ドレッシーに着こなしたいダッフル・コート

ダッフル・コートを着たことがありますか。
厚手の、スポーティーなコートで、
トッグル・ボタンとフードが付いているのが特徴のものですね。
トッグルとは「留木」のこと。
デザインによって、
釣りのウキに似た木製のものと、
動物の角をボタン代りにしたものとがあります。
このトッグルを太い紐で留めるわけです。
またフードも独特で、より直線的な、
まるでバケツに使えそうなフードを付けることになっています。

ダッフルという名前の生地で仕立てられたところから、
ダッフル・コートの名称があるのです。
“ダッフル”duffleはむかし、ベルギー、
アントワープ近くのダッフルという町で織られたところから
その名前があります。
地名としては“ダッフル”Duffelで、
人口約、1万5千人ほどだと考えられています。
もっとも土地の人びとは
「デューフェル」と発音することが多いようです。

「まるで毛布のような」という形容がありますが、
ダッフルに限っては本来、
毛布よりはるかにしっかりとした、
暖かい生地だったのです。
おそらくは中世からこの地で織られていたのでしょう。
英国に伝えられたのは、17世紀。
寒い地方の、漁師たちの着るコートだったようです。

つまりダッフル・コートは
生地の質にかかっているのです。
なるべく厚手で、
しっかりとした材質のものを選びましょう。
上質のダッフル・コートが1着あれば、
その応用範囲は実に広いのです。
極端にいえば、男でも女でも着られる。
特殊なボタンなので、
右前にも左前にも着られるからです。
もし袖が長いようなら、
折返しておきましょう。
ダッフル・コートはそんな自由勝手な着こなしが
様(さま)になるコートなのです。

ところで、ダッフル・コートは
スポーティーなコートだと考えられています。
でもわざとドレッシーな服装の上に羽織るのも面白いものです。
たとえばタキシードの上にダッフル・コートを重ねてみる。
もしこれで粋な雰囲気が出せたなら、
あなたは間違いなくおしゃれ上級生です。


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