服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第436回
5千万円分のおしゃれ心

贈物にもらって嬉しいものは何ですか。
たとえばカフス・ボタン。
1937年にシンプソン夫人は
当時英国皇太子であった後のウィンザー公に
カフス・ボタンを贈った。
それは表面にダイアをちりばめたもので、
よく見ると“E”と“W”の頭文字が浮かび上がる
凝ったデザインのカフス・ボタンだったのです。
カルティエのロンドン店に注文して、値段は10,000ドル。
これが1987年に競売に出された時、
440,000ドルの値がついたそうです。

もちろんこれは
スタッド(シャツの飾りボタン)とのセットでの値段ですが、
それにしてもカフス・ボタンが小さいからといって
バカにしてはなりません。
ついでながらこの440,000ドルという価格は
一対のドレス・スートにつけられた最高額だそうです。
“ドレス・スート”dress suitとは、
カフリンクスとスタッドがお揃いになったものを指します。
礼装用シャツの胸元にあしらう飾りボタン、
あれが“スタッド”studです。

たとえ5000万でなくとも、
カルティエでなくとも、
カフス・ボタンを上手に使うことは
ドレスアップへの近道であることに変りはありません。

もっともクラシックなカフス・ボタンは
裏表のないものです。
たとえば表が貝のデザインなら、
裏も同じように貝になっているスタイル。
つまりバネ式のクリップで留めるカフス・ボタンは
略式ということになります。
でも、圧倒的にクリップ式が多いのは、
日本のダブル・カフスのボタン穴が狭いからなのです。
いつも楽々とクラシックなカフス・ボタンを飾るなら、
幅の広いボタン穴で注文することになります。
あるいは先にカフス・ボタンを買い、
それに合うよう仕立ててもらうことです。

たとえいつものダーク・スーツであっても、
ちゃんと折り返したダブル・カフスに、
クラシックなカフス・ボタンがのぞいていると、
それだけでドレスアップ気分が楽しめます。
ネクタイはシルヴァー・グレイの無地などをどうぞ。


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