服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第435回
ツイードの王様の話

ツイードの匂いを知っていますか。
今はともかく、
昔はツイードは高価な貴重品で、
ニセモノが少なくなかった。
そこで本物であることを認めるために、
匂いをかいだのです。
それは本物のツイードに特徴的なピートの香り。
“ピート”peatは泥炭のこと。

よく知られているように
スコットランドは泥炭(ピート)が含まれた地質で、
昔はこれを乾かして
主たる燃料としたのです。
だからそこで織られるツイードにも
ごく自然にピート臭がしみ込んだのです。
スコッチ・ウィスキーで言うところの
ピート臭とまったく同じ匂いであることは
言うまでもありません。

もっとも今は燃料が近代化されていて、
ピートの匂いがしないからニセモノだと、
決めつけることはできません。

ところでツイードのなかのツイード、
いわばツイードの王様が
ご存じハリス・ツイードなのです。
本物のハリス・ツイードには
必ずそれを示すマークが入っていますから、
すぐに見分けることができます。

スコットランドのハリス島で
手織りにされた生地であるので、
ハリス・ツイード。
正しくは“ルイス・ウィズ・ハリス”という名で、
アウター・へブリディーズ諸島のひとつ。

ハリス・ツイードの特徴は
必ずスコットランド産の羊毛糸が使われることです。
寒い地方で育っているので、
それで織った生地はより暖かいのです。
本来は、手で紡ぎ、手で織った。
でも、今は紡ぐのは機械でも良いことになっています。
ただし織るのは今も手で行われます。
およそ1インチ間に18本の糸を織り込むのが
標準品だということです。

ハリス・ツイードのマークは、
中央に球形(地球?)の上に十字を描いたもので、
すぐに分ります。
これは1908年以来、
ロンドンのハリス・ツイード・アソシエイションによって
認定、発行されている正式の織りネームなのです。

古着のツイード・ジャケットなどを探す時
もしこのハリス・ツイードのマークを発見したなら、
それは間違いなく、手織りの極上品なのです。


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