服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第440回
フォーマル・ウェアの大原則

カマーバンドというのを知っていますか。
礼装用腹帯のことですね。
どうもあのカマーバンドがあまり好きではない、
という人がいます。
必要とあればタキシードを着てもよい。
けれども腹帯はなんとかならないか、
と思うのでしょう。

もちろんカマーバンドなしに
タキシードを着る方法はあります。
カマーバンドの代りに
ドレス・ヴェストを組合わせる。
礼装用チョッキ。
これは胸元が大きく開いて、
ウェストあたりに小さなボタンが3つほど並んだ、
ドレッシーなチョッキのことです。
ときどき前身だけで、
背中が省略されたデザインのこともあります。
色は原則として、
蝶ネクタイに合わせることになっています。
つまり、色さえ揃っていれば、
カマーバンドでもドレス・ヴェストでも良い、
というわけです。
というよりも昔はすべてドレス・ヴェストで、
その略式としてカマーバンドが
使われるようになったのです。

カマーバンドはしたくない。
さりとてドレス・ヴェストの用意もない、
という場合にはどうすれば良いか。
スカーフを代用する方法があります。
スカーフを細長く腹に巻いて、
後で安全ピンで留めておく。
まず前でピンで留め、
それを後にまわして、形を整える。
これも蝶ネクタイの色と合わせるのが良いでしょう。

それにしてもなぜフォーマル・ウェアは、
なにかを腹に巻くのか。
これは主として、サスペンダーの存在を隠すためです。
つまりそれほどサスペンダーを見せることは、
恥かしいことだったのです。
サスペンダーに代表される「下着」を隠すことが、
フォーマル・ウェアの原則とされたわけです。

シャツの胸元に“スタッド”(飾りボタン)をつけるのも、
ふつうの貝ボタンは「下着」的である、
と考えたからなのです。
フォーマルの大原則は昔の服を尊重することと、
「下着」を絶対に見せない、このふたつ。
ふたつの原則さえ守れば、
自由で楽しいドレス・アップが演出できるわけです。


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