服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第444回
クリスマスと水玉の蝶ネクタイ

リプトン紅茶を飲んだことがありますか。
トーマス・ジョンストン・リプトン(1850〜1931年)は
なかなか面白い人物でした。
そもそもはスコットランド、
グラスゴーの、食品雑貨店だったのです。
自分で、はじめての店を開いたのは、
1871年5月10日のこと。
これを成功させて、
次つぎと店をふやしていったのです。

それは1881年のことです。
クリスマスに向けて
なにか店に飾ろうと思った。
食品雑貨店ですから、
チーズを飾ったらどうか。
どうせならうんと大きなチーズを飾ろう。
そこで200人のチーズ職人に頼んで、
800頭の牛から乳をしぼり、
大きな大きなチーズを完成させたのです。
チーズが店に運ばれて来る。
人びとはあまりの大きさに驚いて見ている。
そこへやって来たのが、トーマス・リプトン。
リプトンはやおらポケットから金貨をとり出して、
チーズの中にねじ込んでしまったのです。

この巨大なチーズはクリスマス・イヴの日に
1オンスづつスライスして
販売することにしたのです。
この大きなチーズ、イヴの朝、
2時間で売れてしまった。
もしかしたら自分のスライスの中に
金貨が入っているかもしれませんからね。

リプトンがセイロン紅茶に手をのばしたのは、
1890年のことです。
1898年にはサーの称号を受ける。
サー・トーマス・リプトンが
1920年にはじめたことがふたつあります。
ひとつはティー・バッグを販売するようになったこと。
そしてもうひとつは
蝶ネクタイを愛用するようになったこと。
それは必ず、ブルーの地に
小さな白い水玉模様のものでした。
白い、小さな水玉。
これはむかしからの食品、
金平糖に似た菓子にヒントを獲たものと言われています。

それはともかく今も、
ブルーの地に白い水玉のことを、
“リプトン・ドット”の名前で呼ばれるほどです。
クリスマス、タキシードでドレス・アップする時、
あえて水玉のボウ・タイというのはどうでしょう。
大きなチーズの話でもしてみて下さい。


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