服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第445回
いざという時のフォーマル・ウェア

いざドレス・アップの仕上げということになって、
蝶ネクタイが見つからない。
そんな経験ありますか。
ああ、ブラック・タイさえあれば問題ないのに・・・。
でも、方法がないわけではありません。
黒いリボンがあれば、代用することができます。

黒いリボンは、シルク・サテンや
ビロードのものがあれば理想的です。
“モアレ”と呼ばれる
波目模様が表現されたリボンでも良いでしょう。
このリボンを使って、
蝶ネクタイ風に結ぶのです。
余った両端は好みの長さにカットする。
これはなにも単なる思いつきでもなくて、
“ストリング・タイ”というネクタイの一変種なのです。
長い間使っているとカットした両側が
ほつれるようなこともあるでしょうが、
一夜や二夜のことであれば、
まず問題ないでしょう。

そんなに都合よく黒いリボンがあるわけないじゃないか。
あるいはそうおっしゃるむきがあるかも知れません。
では、黒い中判のスカーフはありませんか。
もちろんシルクであれば最高です。
このスカーフを同じように、
首元で蝶結びにする。
ゆったりと量感のあるアクセサリーになります。
これはその昔、ボヘミアン・タイと呼ばれて、
若き日の永井荷風なども
この結び方を好んだ時期があるようです。

そんなに都合よく
黒いスカーフがあるわけないじゃないか。
なるほど。
でも、まだ諦めることはありません。
黒いハンカチはないでしょうか。
あるいは適当な長ささえあれば、
黒い布ならなんでも結構です。
とにかく黒い布を細長く畳んで、
ドレス・シャツの襟元に巻く。
そして左右の両端を重ねる。
この場合、向って右側の一端を上に重ねます。
そして両端を重ねた中心を
ネクタイ・ピンで留める。

これもとっさのアイディアのように思えるのですが、
実はクロス・オーヴァー・タイ
(またの名をコンチネンタル・タイとも)という
ドレス・アップのためのアクセサリーに原型があるのです。
要するにフォーマル・ウェアもまた、形ではなし心なのです。
心さえあれば、
おしゃれの幅はいくらでも拡がってゆくでしょう。


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