服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第483回
古着を贈った話

アイク・ジャケットというのを知っていますか。
正しくは“アイゼンハワー・ジャケット”。
アメリカ、第34代大統領、デワイト・アイゼンハワー
(1890〜1969年)に因んでの名称。
アイゼンハワーの愛称なので、
ふつうアイク・ジャケットと呼ばれるのです。

第二次世界大戦中に使われた軍服の一種です。
実際の戦闘服ではなく、
一般兵士のふだん着。
日本に来たアメリカ兵たちも、
よくこれを着ていました。
ブルゾンとジャケットを足して
2で割ったようなデザインで、
ごく短い着丈が特徴。
前はフライフロント(隠しボタン)で、
色はカーキー色。
裏地は美しいグリーンになっています。

どうして裏地のことまで知っているのか。
むかし、古着を買ったことがあるからです。
戦争反対! はさておき、
軍服はたいへん良く作られています。
その構造、その仕立ては、
ファッションを研究する上でも
大いに参考になるからです。
そんなわけでいくつか軍服を持っていますし、
また自分で袖を通したこともあります。

ところが私の友人に
アメリカ軍の軍服を趣味で集めている男がいます。
第二次世界大戦中のそれを、
無数に集めているのです。
まあ、世の中にはさまざまなコレクターがいるものですね。

さて、この友人のバースディ・パーティーがあった。
私としてはなにかちょっとしたものを贈りたいと思った。
さて、何がいいかなあ。
この時、ふっとひらめいたのが、
アイク・ジャケット。
そうだ、アイク・ジャケットをプレゼントしよう。

タンスの奥からやっと探し出して、
古い、シワになったアイク・ジャケットにブラシをかけ、
アイロンをあてた次第であります。
もう今では着なくなった、
何十年も前の軍服が
なんとか役立ってくれたような気持になりました。
贈物は本当に難しいものですが、
なにも新しく買うだけがプレゼントではないと思います。


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