服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第484回
1日だけの透明人間

ぜひ一度泊ってみたいホテルはどこですか。
それはもう訪れるそれぞれの場所で違ってくる、
と思うでしょう。その通り。
でも、自分の住んでいる地区でのホテルを
想定したとすれば・・・。
私の場合でいえば、都内のホテル。
都内のホテルへ行くことはある。
でも、都内のホテルに泊ることはあまりない。

けれどもホテルの良い所は、
もっとも身近な非日常空間ということでしょう。
むかしはよく「カンヅメ」ということがありました。
ホテルの部屋にこもって、せっせと原稿を書く。
想像以上に仕事がはかどったものです。
これも日常生活にわずらわせることなく、
ただただ書くことだけに集中できたからでしょう。
そしてもうひとつ。
やはり無意識のうちに原価意識が働く。
宿泊費を払っているのだから、
もしくは払ってもらっているのだから、
少しは仕事をしなくてはと思う。

つまりホテルは上手に使えば、
有効な別世界になるということです。
実はこの間、思うところがあって、
都内のホテルに一泊しました。
まあ、ある見方をすれば、外泊であり、
小さな家出かも知れません。
でも、その効果は抜群です。
リフレッシュ、リセット、心を洗濯。
なにかイヤな気分になった時、
1回の宿泊代でそれを取り換えることができるなら、
むしろ安いものではありませんか。

ある日、そっと姿をくらませる。
1日だけの透明人間。
土曜日なんかいいかも知れませんね。
早目にチェックインすれば、
ざっと24時間かけてのリセットが可能になります。
ふつうチェックインは3時、2時。
あるいは午後の1時ということもあるでしょう。

そこで私は何もしない。
本も読まず、TVも観ない。
1時間、1時間がなんとゆっくり流れてゆくことでしょうか。
何もしないということは、
自分で自分を観るよい機会です。
少し大げさに言えば、禅の心境かも知れません。
自分は何者であるのか。
自分はどこへ行こうとしているのか。
1日だけのホテル・ライフは、
自分を取り戻すための、実に有効な方法です。


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