服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第532回
ホワイト・バックスの実験

白い靴を履いたことがありますか。
「もちろん。だってスニーカーがあるじゃないか」と、
おっしゃるかも知れません。
でも、実は白い革靴のことなのです。
白い革靴?
なんて趣味が悪いのか。
たぶんそう思うでしょう。
しかし世の中にたったひとつだけ(?)趣味の良い、
白いレザー・シューズがあるのです。

それは“ホワイト・バックス”。
たぶん名前だけは聞いたことがあるでしょう。
“ホワイト・バックス”white bucksですから、
本来は「鹿革の靴」のことです。
この場合の「鹿」は主として大鹿の雄を指します。
古い時には革でいぶすことになって、
鞣(なめ)したものだと伝えられています。
そして表面には傷が多いところから、裏を使う。
これが“バック・スキン”back skin。
つまり白いバック・スキンの靴を
“ホワイト・バックス”と呼ぶのです。

“ホワイト・バックス”とくれば、
“レッド・ラバーソール”で、
たいていは赤いゴム底が付いた。
20世紀初頭には、
これがスポーツ用の靴とされたのです。

本物のホワイト・バックスとは何か。
こう考えはじめるとキリがないのですが、
ごくたまにホワイト・バックスが並んでいるのを、
発見することがあります。
デザインは紐付きの外羽根式で、
五穴型が多いようです。
たとえば白いフラノのパンツを穿く時などは、
ちょっとこれ以外の靴は考えられません。
本当にサマになってしまうのですから、
不思議なものです。
余談ですが、ホワイト・バックスには
黒無地の靴下を組合わせるのが、
クラシックな着こなしだと、考えられています。

たしかにホワイト・バックスは汚れやすい
という欠点があります。
固いブラシを使って、丁寧に手入れをすると、
いつも気持良い白さで履くことができます。
だからこそ、よりいっそうの愛着が湧き、
優しい歩き方をしたくなってくるものなのです。

さて、白いパンツに白い靴と決めずに、
もう少し冒険をしてみましょう。
どんな服装にどう組合わせるか。
ちょっとした頭の体操です。


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