服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第540回
内ポケットの美学

内ポケットについて考えたことがありますか。
ここでの内ポケットとは、
背広、ジャケットの内ポケットのことです。
つまりスーツの内ポケットはどうあるべきか。

どうして今さらながら、
内ポケットが気になるのか。
外から見えるわけでなし、
たいして使うわけでなし。
とりあえず付いていれば良いではないか、
そうお考えでしょうか。
いえいえ、違います。
スーツ全体を考える上で、
内ポケットの存在はたいへん重要です。

一般に内ポケットの位置は
低いのではないでしょうか。
私は内ポケットの位置は高ければ高いほど良い、
と考えています。
内ポケットがある以上、
やはり使いたくなるのは人情。
私なんかも手帳やハンカチを入れることがあります。
すると内ポケットの位置が低いと、
ウエスト・ラインに響くのです。
せっかくのジャケットのシルエットが崩れてしまう。
そこで今度は、内ポケットに
なにか物を入れても崩れないよう、
余裕の分量をつけなくてはなりません。
これは大きな問題です。

では、内ポケットの位置を高くすれば良いではないか。
仮に物を入れたとしても、
両胸にヴォリュームが出るので、好都合。
けれどもこれが難しい。
なぜなら内ポケットを高くすると、
物の出入れが面倒になる。
客のほうで洋服屋に
「お前の作る服は疲れる」と文句が出る。
長い歴史のなかで、
経験上そのことを知っているので、
わざと低い位置に内ポケットを付ける。

本当は、位置は高いけれど、
出入れしやすい内ポケットが理想なのです。
なにかこれを解決する方法はないでしょうか。
たとえば内ポケットの横に
ファスナーを付けてみる。
つまり上から出入れするのではなく、
横から出入れをする。
でも開口部が横だと安定が悪いので、
ファスナーを閉めておく。
こうすれば落ちる心配もまったくありません。
しかも窮屈なしぐさをする必要もない。
どうです、ちょっとした名案ではないでしょうか。
内ポケットと志(こころざし)は
少し高めにしようではありませんか。


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