服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第542回
正しいドレス・シャツの快感

ブラック・タイ・パーティーの経験はおありですか。
要するにタキシードで
ドレスアップするパーティーのことですね。
この間、珍しく
「ブラック・タイ」と指定されたパーティーがありました。
日本橋に新しく開店した
「レストラン・サンパウ」(TEL:3517-5700)での
オープニング・パーティーでのこと。

久々にタキシード姿の男たちを
ゆっくり鑑賞する機会を得ることができました。
ここでひとつ気づいたことがあります。
それはブラック・タイで大切なのは、
ドレス・シャツであると。
もちろんタキシード(ディナー・ジャケット)の
シルエットやデザイン、
色や素材も大切でしょう。
ブラック・タイ(黒い蝶ネクタイ)も重要です。
けれども、それにもまして、ドレス・シャツ。
表現を換えるなら、
もっと正式なドレス・シャツを着るべき、
と言いたいのです。

では、正式なドレス・シャツとは何か。
それは“スターチド・ブザム”
(固く糊づけした胸もと)という点にあります。
正確には胸だけでなく、
襟と袖口も厚く、しっかり糊づけをする。
これが正しいドレス・シャツの姿なのです。
この糊づけが厚く、固いほど
ドレッシーなシャツである、
と言って良いのです。
正しい、スターチド・ブザムさえ着ていれば、
他の要素は多少ゆるやかに考えても良い、
と私は思います。

ドレス・シャツの胸もとは、
スタッド(飾りボタン)で留めますね。
あのボタン数はふつう3個です。
が、本当は少ないほどドレッシーということになります。
昔は俗に「イカ胸」と言ったものですが、
ノシイカのように固いところからの
呼び名だったのです。

もちろんドレス・シャツは
クリーニング店に出すことが多い。
ということは私だけが、
より厚く、より固い糊づけを、と叫んでも
空しいのかも知れません。
クリーニング店も勉強は必要です。
19世紀の男たちは、
まるでヨロイのようなドレス・シャツの窮屈さを
楽しんでいたのですから。


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