服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第543回
好きな服、好きなスタイル

着こなしについて、
自分なりのスタイルを持っていますか。
スタイルをあえて日本語に訳すなら何でしょう。
「流儀」でしょうか。
「様式」というのも少し固いような気がします。

“スタイル”styleはもともと
「ペン先」のことだったのです。
ラテン語の“スティルス”
stilusからはじまっています。
もちろん古い時代のことですから紙ではなく、
ロウ板に書いた。
ロウ板に書くための金属製や骨製の、
先の尖った鉛筆のようなものを指して、
“スティルス”。
ここからやがて「文体」の意味が生まれ、
さらには今のような意味へと拡がったのです。

スタイル、スタイル、スタイル。
スタイルほど大切なものは他にない、
と私は考えています。
自分ならではの流儀、やり方、着こなし方。
私もはやく自分のスタイルが欲しいと
強く思っています。
知人のひとりにMさんがいます。
Mさんはもう80歳をこえているはず。
でも、おしゃれなんです。
存在感がある。
で、その原因はどこにあるのか。
よく観察して、分りました。
要するにスタイルをしっかり持っている方なのです。

いつ、どこでお会いしても、
ほとんど同じような服装。
軽いカシミアのジャケットに、
絹のように薄い、
黒のタートルネック・スェーター。
そしてたいては赤い靴下と、赤いベルト。
もう、ほとんどトレード・マークのようなものです。
ただ単に格好が良いというだけでなく、
一個人の人間の存在としてしゃれているのです。
ああ、私もいつかこんな風でありたいなあ、と思う。

すべての服装には、
フォッション(流行)ということがあります。
新しいか、それとも新しくないか。
でも「流行」は2番目の要素なのです。
まず第1番目に大切なことは、
自分らしくあるかどうかなのです。
もちろん一朝一夕にできることではありません。
けれどもとりあえず
自分の好きな服をいつも着ることから
はじめようではありませんか。


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