服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第576回
理想の靴下

今、どんな靴下を履いていますか。
ビジネス・スーツに
白い靴下を履いてはいけない、
とはよく言われるところです。
この「白い靴下」とはスポーツ・ソックスのことで、
スーツにスポーツ用はふさわしくない、
という意味なのです。

一般論としては靴下は
パンツとシューズの接続詞だと考えられています。
この両者をいかに上手に結びつけるか。
そこで結局のところダーク・スーツに合わせて、
紺や黒の靴下が主流になるわけです。

けれども純粋におしゃれの立場からするなら、
いつでも黒無地の靴下がベスト、
というわけでもありません。
時と場合、そして好みに合わせて、
色や柄を楽しむ方法だってあるのです。

私の理想は、ライルの靴下です。
むかしはよく「ライルの靴下」と言ったものです。
“ライル”Lisle は、
今の“リール”Lill の旧称。
フランス北部、ノール県の地名です。
かつてはこの地でしっかりと
堅撚(かたよ)りの綿糸が生産されたのです。
そこで「ライルの靴下」とは、
上質の、堅撚(かたよ)りの綿糸で編上げた
靴下を意味しました。
つまり私としては、より堅撚りの綿糸で、
より薄手に仕上げた靴下を理想だと考えています。
手でさわるとコリコリと音がしそうな手ざわりなら、
文句はありません。

次に、ホーズ(膝下までの長靴下)。
いわゆる「ハイソックス」。
脚をしっかり包み、
ずり落ちる心配が少ないからです。
そして爪先と踵の部分を
リンキング(縫いつなぎ)で仕上げてあるようなら、
もう何も申しません。

もし以上の条件が揃うなら、
ダーク・スーツと黒い靴の間から、
美しい紫色のソックスがのぞいていても、
まったく問題ありません。
ただし、その色が本当に好きな色であることが、条件。
イエローでもグリーンでも結構です。
少なくともこれまで以上に
靴下に関心が向くはずです。
半ダース単位で買っておいて、
常に予備を一足もっているようなら、
必要とあれば、履き換えることもできるでしょう。


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