服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第575回
ダーティー・バックスのシャレ

ダーティー・バックス
という靴があるのを知っていますか。
オフ・ホワイトからベージュを経て、
ライト・ブラウンに至るまでの色調で、
これが「汚れてしまった」かのように見えることから、
“ダーティー・バックス”。

なにが「汚れてしまった」のか。
ホワイト・バックスが。
ホワイト・バックスは以前、お話しましたね。
白い雄鹿の皮を
スウェード仕上げにして使った靴のことです。
もともとはスポーツ・シューズだったのですが、
今ではおしゃれな靴とされています。
このホワイト・バックスが履いているうちに、
自然に汚れてしまったかのようであるところから、
この名前があるのです。

たしかにホワイト・バックスはおしゃれで、
美しいものですが、すぐに汚れる。
とくに私は歩き方が雑であるのか、
一度履いただけで、
どこかに必ず汚れをつける。
なんだかクリーナーを片手に
履いているようなところがあります。

ところがダーティー・バックスなら、
それほど気にしないで、
楽々と使うことができるのです。
ぜひ一度試してみて下さい。
もともとは汚れたような感じが粋なのだ、
と思えば楽です。
このダーティー・バックス、
チノ・パンツをはじめとする
コットン・パンツによく合う。
というよりもコットン・パンツと
ダーティー・バックスの色調を合わせて穿く。
もし、ダーティー・バックスを新調したなら、
その色に揃えてコットン・パンツを選ぶ。
そうすると、パンツと靴とが
親友のような印象になるでしょう。
いつもなに気なく穿いているコットン・パンツが、
少し立派になった感じになるはずです。
パンツと靴を、完全に色調を揃えるのも、
上手な着こなし方のひとつなのです。

“ダーティー・バックス”は
実際に汚れているわけではありませんから、
一種の言葉遊びです。
遊びであり、余裕であり、ユーモアであります。
男のおしゃれで忘れてならないのは、
この心のゆとりなのだろうと思うのです。


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