服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第613回
夢のボーターについて

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
寺山 玲児 様から
「第609回 スポーティーなパナマ・ハット発見」について
ご質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ 寺山 玲児 様にいただいたメール
  男はカッコ 第609回を読んで

出石様

初めまして、寺山玲児と申します。
いつも、大変興味深く、拝見させてもらっております。
第609回の「スポーティーなパナマ・ハット発見」は、
帽子愛好家の端くれとしては、
しばらくぶりの帽子のついてのお話で、とても嬉しく思いました。

去年の夏に紹介されていた、
「魔法のパナマハット」は、大変興味が湧き、
その後、私もトラヤ帽子店で購入させていただきました。
今回も見に行ってみたいと思っております。

さて、今回のお話の中で、出石様が、「カンカン帽」について
「まだ、それを被る自信と勇気がありません」と
仰られていましたが、それは何故でしょうか?

確かに、帽子の型や種類によっては、
年齢性別等によっては、分不相応等の理由で、
好みのモノでも見送ってしまうコトがあるのは、
なんとなく分かります。

しかしながら、出石様にまだ、
自信と勇気が無いと言わせてしまうカンカン帽とは、いったい??
と思ってしまいました。
出石様のカンカン帽に対する
スタンスのようなものを伺わせてもらえば、
理解できるかな?と思っています。
お忙しいところ恐れ入りますが、出来ましたら、後学
(私もいずれはカンカン帽にチャレンジしたいと考えております)
のため、ぜひ、ご教授下さい。よろしくお願いいたします。

追伸 
私は、出石様の著書「男が変わる帽子術」
愛読させていただきました。
いまでは、帽子に関するバイブルとさせて貰っております。
それでは、失礼致します。


■出石さんからのA(答え)

いつもご愛読下さり有難うございます。
またご丁寧にもお便りを頂きましたことについても、
重ねて御礼を申上げます。

「カンカン帽」は純然たる日本語で、
一説に指でたたくと
カンカンと鳴るからだと言われています。
また、もう一説には横から見たかたちが
カン詰めのカンに似ているところから、
来ているとも言います。
それはともかく英語では
“ボーター”boater と呼びます。
「舟遊びをする人」の意味です。
一例をあげれば、
ヘンリー・レガットのボート・レースでも
この帽子を被ることになっています。
そしてそれぞれのスクール・カラーのリボンを
あしらったりするわけです。

ボーターは言うまでもなく夏の帽子で、
舟や水によく似合うスタイルと言って良いでしょう。
でも、そもそもは英国の肉屋のユニフォームであったそうです。
原材料は麦わらですから、
けっして高価なものではありません。
ストロー(麦わら)を細い帯状にして、
これを編んで仕上げるわけです。
手間賃が安い時代には、安価なもので、
汚れたなら捨てて、
新しいボーターを被ったのだそうです。

男の夏帽子として
世界中に流行するようになったのは、1920年代。
もちろん日本でも流行しました。
夏の着物の上に
カンカン帽を被るほど流行ったものです。
それで夏が終ると、皆が川に捨てる。
東京の隅田川にも
ひまわりの花が咲いたような景色になった、
という昔話があります。

帽子を大別すると、
柔らかい帽子と固い帽子とがあります。
一般に柔らかい帽子ほど被りやすいのです。
たとえばシルク・ハットや
ボーターはなかなか難しい、
ということになります。
そしてクラシックであると同時に、
それほど永保ちさせる帽子でもない、
という特徴があります。

サマー・ブレザーに白いコットン・パンツ、
そしてホワイト・バックス。
そんな格好で、
うんと傾けてボーターを被ってみたいなあ、
という夢はあります。


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