服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第643回
美しい言葉と流行語

流行語には詳しいほうですか。
それとも流行語には疎いほうですか。
私は流行語にはまったく自信がありません。
いや、もっと正確に言えば、
流行語に対しては警戒心を持つタイプです。
「タイプ」だってもとは外来語、
つまり流行語みたいなものじゃないか、
とおっしゃるかも知れません。

流行語にも大きく分けて
2種類あるのではないでしょうか。
一時期流行語で、やがて消えてゆく言葉。
一方、最初流行語であったものが、
やがて日常語として定着してゆくもの。
たとえば「だらし無い」という言葉。
これは実は江戸時代の流行語が
そのまま一般語となってしまった例です。
正しくは「しだら無い」
または「しだらが無い」と言った。
この「しだら」の語源については諸説あって、
定かではありません。

ところが江戸期の意気を気取る連中が、
ふつうに言ったのでは面白くない。
「しだら」をさかさまにして
「だらし」とわざと言ったために
「だらしが無い」という仲間言葉が生まれた。
これがカッコイイとされて、
流行語になったわけです。

できるだけ日常語を使って、
流行語は避けたい。
ただし流行語がすっかり日常語となったものは、
もちろん別です。
私は「だらし無い」と言います。

「こだわり」もまた今の肯定的な意味としては、
流行語だと思います。
私はこれは、否定的にしか使いません。
もっとも「こだわり」を流行語と思うか、
思わないかは意見の分れるところでしょう。
これはもう自分の判断に従うしかありません。
そして私は古い人間ですから、
なるべく目下流行中の言葉は避けたいほうです。
手近かにある中判辞書には
ざっと20万語くらいの日本語が出ています。
美しい日本であるにもかかわらず、
使われていない言葉がたくさんあります。
もっと美しい言葉を思い起しましょう。

流行語はここぞという時に、
少しだけ使う。
おやおや、なんだか服の着こなしと
同じ話になりましたね。


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