服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第644回
涼しい下半身の名脇役

ステテコを穿いたことがありますか。
そもそもステテコとは何か、
とおっしゃる方もいらっしゃるかも知れませんね。
今はたしか「ロングパンツ」という名前が
付けられたりしているようです。

「ステテコ」という名称のはじまりは
比較的はっきりしています。
明治13年(1880年)のこと。
落語家、三遊亭円遊が
噺の前に即興の踊りを披露した。
着物の裾を端折って、
滑稽な動きで客を笑わせた。
これがなぜか「すててこ踊り」と呼ばれ、
円遊が穿いていた独特の下ばきもまた
「ステテコ」の名が付けられたのだそうです。

ここで思い出すのは、パンツの語源です。
“パンツ”pants のはじまりは、
“パンタローネ”pantalone だとされます。
これはイタリアの伝統的な
仮面劇に登場する役柄のひとつ。
それは喜劇的な狂言まわしで、
ブカブカの長いズボンを穿いてあらわれる。
この役柄名がいつの間にか、
その穿いている長ズボンをも
意味するようになったのです。

どうも男のズボンは
滑稽さと背中合わせになっているのかも知れません。
逆にいえば、本質的に滑稽さを秘めているパンツを、
正しく穿くのはなかなか難しいことなのです。

さて、ステテコ。
これは夏の着物には必需品だと思います。
たった一枚、ステテコを重ねるだけで、
よりいっそう身体の動きに自信がつきます。
これは初心者であるほどそうでしょう。
多少、裾が乱れてもそれほど気にならないからです。

そしてもうひとつの利点は、
確実に汗を吸ってくれることです。
ことに下半身に多く汗をかくような人にとっては、
快適そのものです。
ステテコが吸収材となってくれて、
又、それは発散してくれるからです。
これも日本人ならではの発明ではないでしょうか。

とにかく汗で困っている人は
一度試してみて下さい。
そして本当にこれは良いと思ったら、
ごくふつうのパンツの下に合わせることも可能でしょう。
爽やかな着心地は保証します。


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