服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第653回
マイナスはプラスのはじまりです

セロテープのはじまりをご存じですか。
正しくは“スコッチ・テープ”ですが、
これは1925年、アメリカで生まれたものです。
もともとは自動車に塗装するための、
マスキング・テープだったのです。
このテープを作ったのが、
ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング
(3M スリーエム)という会社。

このマスキング・テープは
2インチ幅だったのですが、
糊を節約するために、
両端の4/1しか接着面がなかった。
これを使って塗装した
デトロイトの自動車工場のある労働者が、
3Mの販売員に怒った。
塗装の途中、テープがはがれることがあったからだ。
彼はカンカンに怒って、こう言った。
「さあ、このテープを持って帰れ。
 そしてスコットランド人の経営者に、
 糊を全体につけるように言え。」

経営者が本当に
スコットランド人であったかどうかは知りません。
だいたい英米で“スコッツマン”というと、
「倹約家」を指すことが多いようです。
そして“スコッチ”には
「ケチ」という意味があります。
でも、ここからが立派なところで、
“スコッチ・テープ”の名称を
そのままにつけてしまったのです。
もちろんテープの全体にも糊をつけたのですが。
こうして商品は改良され、
売行きが良くなったのです。

私の大好きな“ポストイット”にも
似たような話があります。
これも偶然、3M(スリーエム)の商品なのですが。
そもそもは新しい、接着剤を研究していた。
でも、なぜか完全にはくっつかない。
はがれやすい接着剤。
これは困った。
しかし、ちょっと待てよ、
何か新しい使い方があるのではないか。―
こうして生まれたのが、ポストイット。
たしかにくっつきすぎては困りますよね。

なにごとにも失敗はあります。
逆境に立たされることもあるでしょう。
でも、そのマイナスを素直に受入れて、
その上でプラスになるよう考える。
これがスマートな成功の方法ではないでしょうか。
マイナスとはプラスの前兆なのです。


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