服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第656回
靴とパンツのマリアージュ

モンク・ストラップ・シューズというのを
知っていますか。
たいていは無飾り甲で、
脇に小さなバックルをあしらったデザインのことです。
もともとは“モンク・シューズ”、
もしくは“モンクス・シューズ”と呼ばれて、
1930年代に流行した靴です。
ところが1940年代、
アメリカの陸軍航空隊(当時)の将校用の靴として
採用されたことがあります。
ここから主として
“モンク・ストラップ・シューズ”という言い方が
多く使われるようになったものです。

モンクは言うまでもなく「修道士」のことで、
むかし彼らが履いた
質素な上履きにヒントを得ているので、
その名前があります。
この上履き(軽い靴)は
スリップ・オン・タイプで、
ただ留金だけが付いていました。
この修道士の軽い靴から発想されたために、
“モンク・シューズ”と名づけられたわけです。
必ずしも修道士が履いていたのではありません。

そんなことはさておき、
久々にモンク・シューズを履いてみたいなあ、
と思っています。
スーツにも、またカジュアル・ウェアにも向く、
範囲の広さがあります。
私なりの理想は、
ふつうに立っている状態ではバックルが隠れ、
少し歩いたりする時にバックルがのぞく、
という風でありたいのです。

これはなにも
モンク・シューズに限ったことではありませんが、
パンツの裾と、靴とが
完全に一体化させることが大切なのです。
裾口に折返しが無いものはモダンな感じ、
折返し付きの裾口はクラシックな感じ。
これはもう履く人の好みの問題でしょう。

でも、裾が細すぎたり、
あるいは逆に太すぎたりして、
靴とのバランスが崩れているようでは、
せっかくのモンク・シューズが可哀想です。
ワインと食事の相性をよく
“マリアージュ”と言いますが、
パンツとシューズもまったく同じことが言えるでしょう。
パンツが良いのでも、シューズが良いのでもなく、
“マリアージュ”が素晴らしい。
そのようにありたいものです。


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