服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第672回
ベルベット・ジャケットを愛用しよう

ベルベットの上着を着たことがありますか。
私も以前はこれが好きでよく着たものです。
そして今、久しぶりにまた
着てみたいなあと思うようになっています。

英語でベルベットvelvet
日本語で「ビロード」、
時に天鷲絨(ビロード)の字を宛てることもあります。
これが日本に伝えられたのは、
はるか遠いむかしのことで、
はじめて見るその美しさに驚いた。
そこで天に住むという美しい鳥のようだというので、天鷲絨。
絨とは舶来地を指しています。
本来はシルクですが、
これを綿に置換えたものが、コットン・ベルベット。
英語ではベルベッティーン velveteen といいます。
これが訛って、「ベッチン」。
「別珍」はまったくの宛字です。
が、むかしは足袋や草履の鼻緒などによく使われました。

つまり生来のベルベットは絹製ですが、
かなり高価で、
今はたいてい合繊で代用されることが多いようです。
それはともかくベルベッドの上着を一着選ぶとするなら、
やはり黒無地でしょう。
たとえばシングル前の3つボタンで、
ごくシンプルなデザインでありたい。
これ一着で、カジュアルからドレッシーまで
幅広い着こなし方ができるからです。

たとえば薄手のハイネックや、
タートル・ネック・スェーターの上に
羽織ることもできます。
ベルベットは意外にシワになりにくい特徴があって、
旅行者にも使えるはずです。
しかも数少ないワードロープで、
多彩な着こなしをするにも最適でしょう。

あるいは白いシルクのシャツに、
黒い蝶ネクタイを結んで、
セミ・フォーマル・ウェアとしても
使うことができます。
これもベルベット・ジャケットならではの魅力なのです。

しかしその一方で
欠点がないわけではありません。
ベルベットの毳(けば)が倒れてしまうことです。
時に部分的に、白く光ったように見える。
これは毳(けば)が倒れるからなのです。
スチーム・アイロンでゆっくり蒸気をあてれば
元通りになります。
ただし、生地に直接アイロンをふれてはなりません。
間接的にスチームをあてること。
なにしろ天鷲絨ですから、優しく扱うことです。


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