服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第678回
まるでジョーカーのような黒の上着

リトル・ブラック・ドレスという言葉を
聞いたことがありますか。
もちろん女性の洋服のことなのです。
戦前のパリにはそんな表現があったようです。
もとはフランス語ですから、
“ローブ・ド・ノワール・エ・プティ”
とでも言ったのでしょうか。
「粋な黒のドレス」。
“リトル”にはおそらく
「シンプル」という意味あいもあったでしょう。
「ごくシンプルな黒のドレス」。
最低限これさえあれば、
たいていの場所に着てゆくことができる。
リトル・ブラック・ドレスさえあれば、
どんな着こなしだってできる。
アクセサリイを組合わせたり、
ボレロやカーディガンを羽織ったり・・・。
とにかく今も昔も、パリの女性は、
何かと何かを組合わせることにおいて、
とても自由な、大胆な発想を持っています。

さて、私はここで
“リトル・ブラック・ジャケット”を提案したいのです。
「粋な、黒いジャケット」。
この“リトル”の解釈がなかなか難しい。
というよりもその人その人の解決の仕方が
個性や味わいにつながってゆくのでしょう。
私なら“リトル”を「さり気ない」と訳します。
「さり気ない、黒のジャケット」。
もうこれさえあれば、
どんな場面でも着こなしが演出できる。

リトル・ブラック・ジャケット。
それは中位の、白磁の皿でさえあれば、
どんな料理でも盛付けできるのに似ているでしょう。
まずそのデザインは、可能なかぎりシンプルであること。
たとえばシングル前の3つボタン型で、
本当になんでもないデザイン。
生地もあえてライト・ウエイトの、
一年を通して着られるものが理想です。

場合によっては黒いパンツを合わせて、
スーツ風に着ることもできるでしょう。
あるいは明るいグレイの無地のパンツを組合わせる。
さらにはブルー・ジーンズということもあるでしょう。
上着の下についてもシャツとタイにはじまり、
ノオ・ネクタイ、スカーフ、
タートル・ネック、スェーター・・・。
ありとあらゆる組合わせが可能です。
さあ白いキャンバスの上に
自由な絵を描いてみましょう。


←前回記事へ 2004年10月1日(金) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ