服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第689回
編む・切る・縫うのカットソー

「莫大小」と書いてなんと読むか、知っていますか。
正解は「メリヤス」。
そもそもメリヤスという言葉自体が古いし、
いくら宛字でも見当さえつきにくい。
「莫大小」の意味するところは、
「大小に関係なく」ということなのだそうです。
英語でいえば“ジャージー”jerseyで、
布地と違って伸縮性がある。
つまりサイズに関係なく身体に合わせられる。
だからメリヤスに「莫大小」の文字を宛てたのです。

しかし今では
“ジャージー”という言葉もあまり使われない。
では、どのように呼ぶことが多いのか。
「カットソー」。
ポロ・シャツであろうが、
スポーツ・シャツであろうが、
メリヤス(ジャージー)が素材であったなら、
「カットソー」ということが多いようです。
これは正しくは
“カット・アンド・ソウン”cut and sewn
という専門用語から来ています。
“カット”も“ソウン”も過去分詞で、
「裁断され、縫われた製品」ということなのです。
たしかに一枚の編地を、
まるで布地であるかのように裁断し、
それを縫製することによって、完成される。
実に理路整然とした表現であるかも知れませんね。

言葉の問題はさておき、
現実に「カットソー」の製品がふえているのは、
間違いないところでしょう。
編機の進化などもあって、
編地とは知らずに着ているような場合もあるほどです。
と同時に、シャツのような軽衣料だけでなく、
ジャケットやコートのようなものまでにも
使われるようになっています。

けれども時代とファッションがいくら変っても、
「カットソー」はやはり
「莫大小」に特徴があります。
それは布地にはない伸縮性があること。
その伸縮性を活かすことが、
上手な着こなし方につながるのです。

もし「カットソー」のシャツや
ジャケットを選ぶ場合には、
必ずジャスト・フィットを意識すること。
大きいサイズよりは小さいサイズ。
そうすることによって、
「カットソー」ならではのシルエットが生まれるのです。


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2004年10月18日(月)

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