服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第691回
細く、長くの、コオデュロイ人生

コオデュロイ・ジャケットが一着欲しい。
そう思ったことありますか。
実は、今の私がそれなのです。
今の季節、これほど応用範囲の広い服装も
少ないのではないでしょうか。
かつてはトゥイード・ジャケットが
スポーツ・ウエアにおける王座に君臨していました。
いや、今でもそうなのかも知れません。
しかし少なくとも現代感覚という点では、
コオデュロイ・ジャケットに
軍配が挙がるのではないでしょうか。

けれどもコオデュロイもまた、
トゥイード同様に、
たいへん古い歴史を持っています。
フランスのルイ王朝時代の、
作業服の生地としてはじまったと、考えられています。
“コルド・デュ・ロア”(王様のうね)から
今日の“コオデュロイ”corduroyが
生まれたことは、よく識られている通りです。

もし可能なら、コオデュロイの裏側をよく見て下さい。
表からは分りにくいのですが、
生地の裏側が緻密であるものほど、
上質のコオデュロイなのです。
ついでながら裏側には、
平織と綾織の二種類があります。
前者を“タビイ・バック”、
後者を“ジェノア・バック”と呼びますが、
いずれにしても目が細かく、
滑らかであるものほど、
良いコオデュロイということになります。
しっかりとしてケバが強く、倒れにくく、
抜けにくいのです。

本来の生地はたいへん丈夫なものですから、
10年、20年着ることを想定して選んで下さい。
ということはクラシックで、
上質のものということになるでしょう。
大人のおしゃれはコオデュロイに限らず、
「量より質」と考えて下さい。
当然、その色も黒やダーク・ブルーをはじめとして、
ベイシック・カラーをおすすめします。

服装の組合わせさえ工夫すれば、
たいていの場所へ着て行けるでしょう。
ピン・ウェール(細畝・ほそうね)であればあるほど上品で、
より幅広い組合わせが可能です。
10年20年着続けて、
袖先や肘がすり切れてきた頃が、カンロク。
レザーやスウェードでトリミングをして、
さらにもう10年は着られることでしょう。


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2004年10月20日(水)

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