服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第694回
コオデュロイ語源説の謎

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
柚子 様から
「コオデュロイの由来」について
メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ 柚子 様にいただいたメール

件名:コオデュロイの由来

出石様、

いつも楽しく拝見しております。
おしゃれな男性って見ているだけで楽しくなります。
出石さんのようなセンスのいい男性が増えたら
嬉しいなあ、と思っています。

私はフランス語の通訳をしているものなのですが、
コオディロイが
フランス語から由来しているというお話に興味を覚えまして、
インターネットで検索してみたのですが、
日本語と英語のサイトでしか
corde du roi を見つけられませんでした。

昔のことは分かりませんが、
現在はcordeは畝ではなく紐という意味です。
フランスではコオデュロイ生地のことをvelours a cote
または velours cotele
(アクセントがうまく表示できませんが)と呼ぶんです。
なんとなくイギリスあたりでフランス風に作られた言葉かも?
という気もします。

何かの折に新発見があったらお知らせします。
さようなら。

柚子


■出石さんからのA(答え)

ご丁寧にもお便りを下さりありがとうございます。
また日頃からお目通し下さっていることにも、
重ねて御礼を申上げます。

さて、コオデュロイcorduroyの件ですが、
柚子様のご指摘により、改めて調べてみました。
その結果は、すべて柚子様のおっしゃる通りでございます。
フランス語の“コル・ド・デュ・ロワ”
corde du roiから来ているというのは、
まったくの民間語源説のようです。
ここにお詫び申上げます。

そもそもフランス語の辞書に
“コオデュロイ”の言葉はありません。
のみならず、古語としても存在したことがない。
柚子様の御説の通り
“ヴェルール・コトレ”
velours cotele、
もしくは“ヴェルール・ア・コト”
velours a cotes
と表現するとのこと。
つまり「畝のあるビロード」というわけです。
ということはまず最初に
“ヴェルール”(ビロード)があり、
その後に登場したところから
「畝のあるビロード」という言葉が生まれたのでしょう。
“ヴェルール”自体は
1155年頃から使われているそうですから、古い。
ただし“ヴェルール・コトレ”が
いつ頃にあらわれたものかは、分りません。

では、どうして英語に“コオデュロイ”という言葉があるのか。
「オクスフォード英語辞典」では、
1774年が初出であると記しています。
それは“チャドウィック特許”という書物にあって
corderoyの綴りなのです。
一方、繊維辞典を調べると、
コオデュロイが人気となったのは
1783年頃からだとあります。
ということは、18世紀後半に生まれた可能性が高い。
一説には、英国サマセットシャーで
最初に考案されたのではないかと、
考えられているようです。
さて、肝心の語源ですが、
コーデロイCorderoyという人物名ではないか、
という説があります。
つまりはじめは、商標登録名だったのではないか。
ただしこの折、半ば冗談に、その名を印象づけようとして、
フランス語の「王様の紐(コード・オブ・キング)」から
自分の名前が出ているのだと、思わせた可能性はあります。
これでまた、ひとつ少しだけ賢くなった気がしています。
とにかくありがとうございます。


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