服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第701回
ボタンで遊ぶ着こなし術

いざ出掛けようとして、
服を着てみると、ボタンが取れていた。
そんな経験がありますか。
ついこの間の私がまさにそれでした。
ダブル前の、ネイビー・ブルーのブレザーを
久々に着ようとしたら、ボタンが取れていた。
紺屋の白袴とはこのことで、
お恥しいかぎりです。
ブレザーですから、金色のメタル・ボタン。
よし、急いで付けようとしたのですが、
そもそもボタン自体が無い。
万事休す。
さて、どうしたか。

たまたま六つボタン式の、
一番下のボタンが取れていた。
で、私は一計を案じて、
もうひとつ残っている、
片方のボタンも取ってしまった。
つまり六つボタン型を、
強制的に四つボタンにしてしまったのです。
一番上の列は段通りになっていますから、
実質的には
2列目のボタンだけを留めて着ることになる。
で、鏡を見ると、
これがどうして悪くないんですね。
一瞬、アレッという感じはあるのですが、
前よりもスマートに見える。

その原因を考えてみると、
下の列のボタン2個を外したために、
視覚的なバランスが上に上ったのです。
怪我の功名といったところでしょうか。

もちろん、だからといって
付いているボタンまで無理に外しなさい、
と言うわけではありません。
上着の前ボタン位置、
あるいはその有無によって、
全体のバランス感覚が大きく左右されることを、
知っておきたいのです。
一般にボタン位置が高くなればなるほど、
上着の重心は上に上ります。
端的に言って、
スマートな印象を与える傾向があります。
可能な範囲で、ボタン位置を操作するのも、
着こなし上手への道につながるものでしょう。

そしてもうひとつ。
服を上手に着るのは、
なにも与えられた上着に
袖を通すだけではないのです。
その時、その時の条件や事情にあわせて、
臨機応変に智恵を添えてみる。
これこそが着こなし上手なのです。
つまりファッションとは
単純に買うものではなく、
自分のアイディアで創るものでもあるのです。


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