服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第735回
万年筆のおしゃれについて

友達の万年筆を借りたことがありますか。
近くにペンがない時など、
つい「ちょっと貸して」と言いたくなることがあります。
でも、どんなに親しい間柄でも
万年筆の貸し借りは禁物なのです。
その意味ではお金と似ているところがあります。
いや、お金以上かも知れません。

万年筆は持ち主の手に馴れているからです。
万年筆の持ち方、ペン先の角度、筆圧・・・。
ほぼ同じような握り方と書き方を続けることによって、
その人に合ったすばらしい書き心地となってゆくからです。
これを途中で別の人が別の持ち方で使ったりすると、
ペン先のバランスが狂ってしまうのです。
つまり「お金は貸しても万年筆は貸すな」
ということになるのです。

これをまた別の角度から見ると、
新しい万年筆は書き心地が悪い、
ということにもなります。
一定の書き方を繰返すことによって、
次第に自分の指先の一部になってゆく。
万年筆は想像以上にデリケートな生き物なのです。

たとえば使い慣れた万年筆は、
キャップをはめたままの状態であっても、
床などに落としてはなりません。
ごくごく微妙に書き味が違ってきます。
以上のような理由から、
大切にしている万年筆であればあるほど、
外には連れ出さないほうが良いのです。
どうしても外で使う必要がある場合には、
それ専用の万年筆を用意しておくことをおすすめします。
万年筆を入れる専用のケースのことを
“シース”と言いますが、
1本入れ、2本入れ、3本入れなど、
好みのものが選べるはずです。

革製の葉巻入れを
万年筆のシースとして使っている人もいますが、
なかなかおしゃれなことだと思います。
しかしいずれにしても丁寧に扱うことが大切です。

私自身はモンブランの
「モーツアルト」という小型万年筆を
旅行用に使っています。
まるでオモチャのような大きさですが、
その実性能はすばらしいものがあります。
これならキャンディーやチョコレートの小箱にも
すっぽりと入ってくれるからです。


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