服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第739回
自分自身への投資術

サキという名の作家を知っていますか。
サキ(Saki)とはいささか風変りな名前ですが、
これはペンネーム。
本名はヘクター・ヒュー・マンローといって
ビルマに生まれた英国の短編作家。
かつてヨーロッパの上流階級では、
ゲスト・ルームのベッド脇に
サキの短編集を置くのが粋とされたとのことです。
O・ヘンリにも似た作風ですが、
もう少し辛辣なところがあります。
もちろん日本語訳も何冊か出ていますから、
文庫本で探せるでしょう。

さて、そのサキがこんなことを言っています。
<<彼女の洋服はパリ製である。
  しかし彼女はそれをかなり強烈な英国なまりで着ている。>>

いや、原文を紹介したほうが良いでしょう。
Her frocks are built in Paris,
but she wears them
with a strong English accent.

むかし少しはサキを読んだものですが、
こんな名文句があったことなど、
すっかり忘れていました。
ネッド・シェリン編の
『ユーモラス引用句辞典』のおかげなのです。
最近、洋書店で見つけた一冊なのです。
しかもこの引用文の出典が
サキの「レジナルド」(1904年)にあることも、
ちゃんと分ります。
たとえば「アメリカ」、「ブックス」などを
大項目ごとに纏められていますから、
辞書を片手にゆっくり眺めてゆく楽しさがあります。
これで少しは英語が上手になると、
もっと嬉しいのですが。

ところでサキの言葉は当然、
男の着こなしについても言えるのではないでしょうか。
イタリア仕立のスーツを、
日本語のアクセントで着こなしたらどうなるか。
いや、これはアクセント自体の問題ではなく、
「服」そのものよりも、
実は「着こなし方」のほうが大切ですよ、
という教訓だと思います。
高価な服を着ていても、
安っぽく見える人もいます。
逆に量産された服を着ていながら、
オートクチュール風に見えることもあるでしょう。
要は中身の人間性を磨いておくことが大切なのです。


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