服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第751回
袖口のおしゃれ術

「袖を連ねる」という言葉を知っていますか。
私は知りませんでしたが、
「連れだって一緒に行く」という意味なのだそうです。
「袖振り合うも他生の縁」は
比較的よく使いますよね。
もちろん「前世(ぜんせ)からのえにし」を説いた言葉です。
今、手もとの辞書を開いて気づいたのは、
「袖」を使っての成句がざっと20も並んでいること。
当然、和服の「袖」なのでしょうが、
それほど深く暮らしのなかに
入っていたということでしょう。

同じように“スリープ”
sleeveにも成句があるようです。
たとえば「袖をまくり上げる」は
「仕事の用意」の意味で使われるとのことです。
つまり洋の東西を問わず、
「袖」が服の要(かなめ)のひとつであることを
教えてくれるではありませんか。

ふつうスポーツ・ジャケットを着る時、
下にスポーツ・シャツやスェーターを重ねます。
この場合、上着の袖口から
シャツなどのカフスが少しのぞくべきなのです。
これは着こなし上の基本中の基本でしょう。
これは単にバランス上の問題だけでなく、
配色上の問題でもあります。
ダークな上着の袖口からは、
明るい色調のカフスがふさわしい。
つまりふたつの袖口は
コントラストがあればあるほど良いわけです。
似たような色が、
袖口で重なるのは避けましょう。

シャツなどの上にジャケットを重ねて、
下側のカフスが出ていないのは、
ルール違反です。
上着の袖が長すぎるか、シャツの袖が短すぎるか、
そのどちらかに原因があります。
一般的には上着の袖が長いことが多いようです。
手の甲を横に伸ばして、
水平近く拡げてみましょう。
この場合、上着の袖口と干渉して
シワが出るようなら、
長すぎることの信号です。
誰にでも、簡単にできるテスト方法でしょう。

そんな場合には、
袖の長さを2、3センチ短くするだけで、
かなりすっきりとした印象に一変するでしょう。
ほんの少し、袖口のバランスに気を配るだけで、
おしゃれ感覚は大きく向上すること間違いありません。


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