服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第784回
とても口にはできないパンツの穿き方

インエキスプレシブルという言葉を知っていますか。
“インエキスプレシブル”
inexpressible 。
つまり「口にできない」という意味ですね。
むかしはこれが
「ズボン」の遠まわしな表現であったのです。
今はパンツであり、トラウザーズであり、
ごく自然に口にすることができます。
でも昔の人にとっては
恥しい表現であったのでしょう。
時代が変れば言葉も変る。

ずり落ちたパンツを上に引上げるには、
両手でその前後を持つ話は、
以前にしたと思います。
パンツの両脇を持つのではなく、
前と後を持上げる。
これはウエスト位置を水平に保ち、
パンツの小股を美しく穿くための
基本的な方法なのです。

「小股」と言って良いかどうか、
ほかに表現を思いつかないので、
とりあえず今はこう言っておきます。
要するにパンツの前開き部分のいちばん下、
左右の脚部が交わるあたり。
一応ここでは「小股」と呼ぶとしましょう。
誰もがパンツのシルエットには
気を配るものですが、
小股がすっきりと美しく収まっていることも
重要な点です。
小股が美しく収まれば、
パンツ全体をもう少し上に引上げることも
可能になります。
小股を制するものこそ、
パンツの美しさを制する、とも言えるでしょう。

新しくパンツを購入する時には、
左右の脚部を開いて、
股の縫目をよく見て下さい。
ごくわずか、左右対称になっているはずです。
もし仮に対称であったなら、とても穿きにくい。
これは専門用語で“ドレス・カット”というのですが、
小股がより立体的であるよう工夫されているのが、
良いパンツの条件とされます。

いずれにしても上質のパンツは、
最初から微妙に左右非対称であるよう
仕立てられているのです。
その立体構造を充分に理解して、
小股がすっきり、美しく収まるよう
自分なりの穿き方を研究することです。
そうすれば少なくとも3センチは
脚を長く見せることができ、
シルエットもより美しくなるでしょう。
これも又、
“インエキスプレシブル”なことかも知れません。


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